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Present
今すぐ、此処で、接吻を
「赤也、聞いて。ねぇ」

「うっせ」

「あーかーや!」



赤也は私に見向きもせず、すたすた歩いていく。私は小走りで赤也を追いかける。いつもは笑いながら二人並んで帰る道を、今日は全然違う表情で歩く。赤也は不機嫌な顔(今は背中しか見えないけれど)、私はきっと疲れた顔をしてる。部活で散々走ったのに、小走りとはいえ、また走るはめになるなんて。

そもそも噂なんてものが立つからいけない。赤也が怒った原因は、私ととある男子がキスをしていたという話を耳にはさんだからだった。噂はまるきり嘘な訳じゃない。確かに昨日、同級生に告白されてキスされそうになった。



「ねぇ、私キスなんてしてないから!唇の端がかすっただけ」

「キスしてんじゃん」

「あんなのカウントしないし、そんな口にするのも忌ま忌ましいこと言わないで!気持ち悪いことこの上ない。それに私ちゃんと阻止したんだよ?肘鉄と膝蹴り、クリーンヒット」

「へぇ(それも噂になりゃ、奴は笑いもんだな)」



最近の中学生はませていると思う。私もませていないとは言えないが、図々しくも人の唇を奪おうとした奴よりはマシだ。でも、こうなったことを少しラッキーかなとも思う。赤也が嫉妬してくれる機会なんてあまりないし、不謹慎だけど嬉しい。でももうそろそろ、ゆっくり二人並んで歩きたい。白いシャツの袖を掴むと、赤也はようやく立ち止まってくれた。私は上がった息を整える。



「赤也、いい加減機嫌直してよ」

「ヤダ」

「そんなこと言わないでさぁ」

「…Do you kiss me now here?」

「は?何て言ったの?」

「Do you kiss me now here?」

「…はぁ?あんたどこでそんなん教えてもらったの!(ばかの癖に、余計なことばっかり覚えるんだから…)」

「先生から教えてもらった」

「先生ってば…!」

「で、どうなんだよ?」

「ここ、公道だよ?」

「見られたっていいじゃん」



口端を吊り上げて、悪戯な目をしてる彼からの挑戦を拒む必要はどこにあるだろう。首に手を回して、背伸びして、フレンチじゃないくちづけを。



   酸
      素
    が
  足
       り
    な
      い











親愛なる皐季様

藤城玲より相互記念





あとがき。
ひぃ!遅れまくっちゃってすみません…!
赤也くん二作目。
一昨目は没になりましたとさ。
皐季さま、これからもよろしくお願いしますo(^-^)o

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