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焼き芋
「江流、焼き芋しましょうか。」
突然、師である光明三蔵が言った。
庭の掃除をしていた江流は箒を止め、光明を見た。
いつもの様に木に寄りかかり、空を見ながら煙草を吹かしている。
「今は師走です。こんな冬の時期に甘藷(さつまいも)なんてないんじゃないですか?」
江流は少し呆れながら空を見ている光明に言った。
すると、視線を空から江流に移した。
「もう師走ですか。あぁ、だからこんなに寒いんですね。」
とのほほんと笑いながら言った。
江流は軽く溜め息を着いた。
“こういう人だとわかっているけど、なんでこの方はこうも……”
江流は心の中で呟き止めていた手を再び動かした。
「だけど甘藷じゃなくても焼き芋は出来るんですよ。」
江流はまた手を止め、光明に顔を向けた。
光明は先程と変わらないのほほんとした笑顔のままだった。
「それじゃあお芋貰って来ますんで葉っぱ集めといて下さいね。」
煙草を懐に入れ、のほほんとした足取りで食物庫の方へ歩いていってしまった。
取り残された江流はやれやれと苦笑いをし、掃除をして落ち葉を集めた。
しばらくして両手に馬鈴薯(ジャガイモ)を沢山持って光明が戻って来た。
「沢山葉っぱ集まりましたね。それじゃあ焼き芋しましょうか。」
とても楽しそうにしている光明を見て、江流の仏頂面が少し和らいだ。

………数十分後

「お師匠様、そろそろいいんじゃないですか?あんまり焼き過ぎると丸焦げで灰みたいになりますよ。」
「そうですね。それじゃあそろそろ出しましょうか。」
江流は光明の言葉を聞き、庭に落ちていた枝を使い芋を取り出した。
持てる程度の温度まで冷ましておくとその中の一つを光明は半分に割った。
「もう大丈夫そうですね。それじゃあ火を消しましょうか。」
江流は頷き、あらかじめ横に置いておいた水が入った桶を持ち水をかけた。
「それじゃあ、中でゆっくり食べましょうか。」
火が消えた事を確認した光明は焼き芋を全て持ち、寺院の自室の方へ歩き出した。
その後を空になった桶を持った江流は着いていった。

……

「お師匠様。」
江流は空を見ながら師を呼んだ。
光明はゆっくりと視線を空から江流へと移した。
「この焼き芋、少し頂いてもいいですか?」
江流はまだ空を眺めていた。
「いいですよ。それで誰にお裾分けするんですか?」
ビクッと驚き、視線を空から光明へと移した。
その顔を見て光明はクスッと笑った。
“誰がこの子が無表情だと言ったんですかね。こんな表情もするのに…”
しばらく、そのまま沈黙していたが江流が意を決して光明に問いた。
「な、なんで誰かに上げると思ったんですか?」
それだけ言うと黙って光明を見た。
「それはですね…」
「それは?」
「それは何となくです!」
「……は?」
真剣に聞いていた江流の顔が少し歪んだ。
「何となくそう思ったんですよ。江流がこんな事考えているんじゃないかなぁ〜と。なんたって私は…」
光明は何時にも増して目元を和らげ、江流を見た。
「私は貴方の師であり、父親でもあるんですよ。だから貴方の事が分かるんです。」
「…」
「まあ、父親って言うより勝手に父親の代わりの様な事をしているだけですけどね。」
光明は江流の金糸の髪で覆われている頭を優しくなぜた。
江流は嫌がりもせず、ただ光明を見ていた。
「…………に上げようかと…」
「?」
江流は真っ赤になりながら視線を光明からそらした。
「朱泱に上げようかと……思ったんです。」
「そうですか。」
江流はそれ以上何も言わず、持っていた焼き芋を食べ始めた。
光明は懐に入れていた半紙に焼き芋を包んで江流の横に置いた。
「では、これを持って行きなさい。」
江流は光明も包んである芋も見ず、ただ頷いた。
そして、光明と一緒に芋を食べ始めた。

それは、和やかな冬晴れの日の思い出………



†・†・†・†・†・†・†

去年の12月ぐらいに考えて作ってたモノです
時期が全然違うのは許して下さい
ずっと放置してました(苦笑)

あと、光明様と江流のやり取りがおかしいのも許して下さい

けど、結構楽しかったです

光明様と江流 大好きです

此処まで読んで頂き有り難うございます。

おまけをつくってみましたので、良ければ其方もご覧下さい

2009.08.23

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