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DT×DT〈前/来神静臨〉
〈一部静雄視点〉






臨也を押し倒したのは本当に偶然だった。
俺、平和島静雄はいつもの様にノミ蟲と廊下で顔を付き合わせては売り言葉に買い言葉で喧嘩を始め、授業中も休み時間もぶっ通しで喧嘩を続けた午前から午後。見失う度に休息を取ったりなどしていたが、今日はいつも以上に激しく追いかけ回していた。それこそ一日中鬼ごっこをしていたと言っても過言ではない。さすがの臨也もかなり疲労しているという事が目に見えていたので、今日こそ仕留めてやろうと意気込み、人気の無い空き教室へ追い込んだまでは良かった。
太陽の眩しさに臨也の眼が眩む。思わず足を竦ませた臨也に、今まさに投げつけようとしていた掃除用具入れの軌道を逸らすのに静雄は前のめりに体勢を崩す。静雄が敢えて軌道を逸らしたのは、あのままぶつけてしまえば確実に臨也が致命傷を負うと直感で解ったからだった。
別にそれはそれで嬉しいが、下半身不随や失明でもされると後の責任が面倒なんでな。優しさで躊躇ったわけでは、無いと思う。

「どいてよシズちゃん」
「………」

今、臨也は静雄の下に居た。完全に押し倒す形となり静雄の思考が急激に固まっていく。遁走に疲れた臨也は息を切らし、胸を忙しく上下させていた。この距離では臨也の息が静雄の顔にかかり、静雄は無言のまま硬直していて、臨也が居心地悪そうに静雄を睨み上げる。

「どいてってば、眩しいんだよその金髪」
「………」

倒れた時に頭をぶつけたのか臨也が涙目になって目元を赤らめていた。やけに、艶めかしい。まだ落ち着かない臨也の忙しい呼吸が静雄の鼓膜で嫌に響く。

「臨也」

先程まで沈黙していた静雄が低くそう呼べば、臨也はびくっと身構えた。殴られるとでも思ったのか瞬間的に目を瞑る。その反応に静雄は毒気を抜かれ、同時に心臓が鳴ったのだと理解する前に臨也の口を自分のそれで塞いでいた。

「!?」
「、あ、悪ぃ」

そっけなく答えたが、意外にも静雄自身は動揺しておらず、その上不快感もない。反対に臨也の動揺は凄まじくて、ぴしりと凍りついていた。

「しししシズちゃん!?な、おま、今俺に何した」
「何って、あー、接吻?」
「なんでそう敢えて古典的な言い方するんだよっていうか頬を赤らめていうな!」

下でギャーギャー喚きだした臨也を食い入るように見つめる静雄。何でこんな殺したいほど鬱陶しい下種野郎を組敷いて凶行に及んでしまったのかと静雄は困惑したが、それはほんの少しだけで、正直どうでも良かった。何故なら、

「臨也、」
「な、何」
「するぞ」
「何を!?」

自分がもっと凄まじい行動を取るという事を自覚していたからだ。





「おぉお落ち着こうかシズちゃん落ち着け、なっ、ちょっとマジかよ、脳みそが筋肉なのは理解してたけど知能まで無くなったの?野生に返ったのかな?じゃあ丁度良い自然公園に早く帰れ」
「んだよ喚くな殺すぞ」
「ひどい言い様だね、完全に今から強姦するような物言いじゃないか。嘘だろ、シズちゃん正気なのかい?ははっ、正気な訳無いよな相手誰だかわかってんの俺だよ?だからくそ、離せってば」
「うるせぇ」

静雄が臨也の口を再び塞ぐ。臨也は嫌悪感を露わにし必死に静雄を押し返そうとしていたが、華奢な力が怪物である静雄に通じるはずもなく、器用に制服を脱がしていく静雄に臨也が焦る。普段ならすぐにキレて思考など捨てるのに、恐ろしいほど冷静な静雄にいつもと立場逆転、翻弄されるのは臨也だった。

「本当にやめろってば!死ねよ、やめっ、俺に触るな!」

余裕の一切ない声でそう一喝した臨也の声で、怪訝そうに静雄は手を止めた。そこでやっと臨也が震えている事に気付き眉を寄せる。

「何だよお前、どうせこんな事慣れてんだろ、やらせろよ」

そう言った瞬間、明らかに傷ついた表情を浮かべた臨也に静雄はやってしまったと舌打ちした。唇を噛んだ臨也がナイフを取り出し静雄の首元に宛がう。ナイフを持つ手は、やはり震えていた。

「俺から離れろ、触るな、俺に触るな」
「手前、なにそんな怖がってんだよ」

いつもと違う警戒を全身から放っている臨也に静雄が顔を顰める。軽口の応酬さえも出来なくなった臨也の様子を見ていると、静雄に怒気が湧き立ってくることはなかった。

「自分から人間に触れるのは好きだけど、人間から触られるのは嫌いだ。気持ち悪いし吐き気がする、全身が拒絶反応を起こすんだよ。だから、俺に触った人間なんていない。」
「てっことは手前」
「…慣れてなんかないよ、こんな性格だからそういう風に思われがちだけどさ。もう一度言うけど、俺はした事なんかないし、したいなんて思わない。人間とべたべた触れ合うなんて冗談じゃない。残念だねリードしてあげられなくて。だからねシズちゃん、そろそろ退いてくれないか、」

瞬間、止められていた静雄の手が再び制服を脱がす作業に取り掛かかる。臨也は思わずかっと頬を染め、静雄に抗議するつもりでナイフを更に押し付けた。けれど、日が暮れる前の濃い太陽の光に照らされた静雄の表情があまりにも眩しくて。

「人間に触られるのが嫌なんだろ?だったらよぉ、手前の言う所の人間じゃねぇ俺は、手前に触れても何ら問題ねぇだろ。クソうぜぇが、それでいい」
「俺は良くないね!何でこの世界で一番嫌悪してるシズちゃんなんかに触られなきゃならないんだよ!そもそも何で俺なんか…!」
「わかんねぇよ」

わけわかんない、とでもいう様に今度は戸惑いが隠せない臨也。あるはずの嫌悪感が溢れすぎ別の感情に成り替わりそうで怯える。頬に手を添えてきた静雄に、臨也は抵抗しない。

「俺だって手前に触るなんて願い下げだが、手前の処女は俺が貰ってやる」
「もの凄い矛盾を抜け抜けというな!ていうか処女なんて言い方するな、そもそもシズちゃんの童貞なんかいらない!シズちゃん、どこまで俺にツッコミさせる気なんだい…!」
「突っ込むのは俺だけどな」
「減らず口を!」

臨也が振り上げたナイフは静雄の肩に突き刺さった。凡そ2ミリ。恨めしげに睨む臨也は、どうも瞳に力を込めれない。教室の窓から差し込む光が、静雄と臨也お互いの感情を眩しさで覆うのだ。

「嫌か?」
「…嫌に、決まってるだろ」
「嘘だな」

再び、唇が重なるかと思えば、今度は噛んだ。静雄が嫌にむかつく格好いい顔で笑い、獣としての本能で獲物を捕らえる。臨也の手から滑り落ちたナイフが、カシャンと音を立てて床に響いたのが臨也の答えだった。





「ひっ、やっぱ考え直してくれないかなシズちゃん…!」
「今さら何言ってんだよ」

制服を剥かれ、今まさに下着を引きずり降ろそうと手をかけている静雄がこの異常な現状にあまりに冷静で、臨也に更なる戸惑いが襲う。しかしそんな臨也を無視して我が道を行く静雄は、遠慮なく下着をひん剥いた。

「ふぅわああああっ!?」

思わずそんな悲鳴に近い叫びを漏らし、臨也が下着を元に戻そうとすれば静雄に容赦なくそれを止められる。食い入るように見つめてくる静雄に羞恥心を煽られた。

「そんなでかい声出してると誰か来るぞ。」
「っ!」

そういえばここは学校の教室だったのだと臨也から血の気が引いていく。

「くそ、最低だなシズちゃっ、ひ、あ、あ」

肌に触れられ、ぞくぞくとした何とも形容しがたい寒気が臨也を駆け抜けた。一日中追走逃走を続けたせいで体力は残っておらず、目の前の静雄から逃げる術は残されていない。

「ふ、っ、やだ、よくそんな、触れるね…」
「あぁ、不思議だ」
「っ…この童貞野郎…!」
「あんだと手前、」
「っひ、ぃあ、あ、―っ!」

静雄が童貞と言っても、相手は男である。どこをどうすれば気持ちがいいのか、そして達が悪い事に男同士のやり方は知識としてだけはあるのだ。臨也のそれを上下に扱いてやれば、臨也が唇を噛んで少しづつ溢れる快感に悶える。その姿は静雄の下っ腹へ急激に熱を溜めるには十分なほど扇情的だった。

「っあ、変、変だよシズちゃん…っ何、これ」

そして臨也も童貞だ。事実、初めて人から施される快感にすぐに勃ち上がり始めている。それを与えられるのが人でない怪物からとなれば、嫌悪を交えたある種の強烈な快感とさえなってしまっていた。

「く、…ぁ、…っ」
「一回先出せ」
「っや、やだ、あっ」
「ローションねぇんだよ」

その意味をすぐさま理解できるのが臨也の長所であり可哀そうな所だ。目の前の静雄が恐ろしい事を平気で言うものだから、臨也は思わず身を捩る。しかしそれを易々逃がす静雄ではない。

「オラ、早く」
「はっ、あぁう、こわっ…怖、ぁ、いっ…!」

自分の身体反応に本気で怯えている臨也が不憫だと静雄は目を細めた。恐らく自身でする場合は生理現象なのだからと苦々しく割り切っているのだろうが、相手は臨也自身ではない誰かで、その上嫌悪すべき静雄なのだ。怖くないはずがないし、取り繕う余裕もない。

「やだ、ぁっ、やめッ…、きもち、悪い…!」
「それが気持ちいいって事だろ」
「っなわけ、あっ、ん…っふぁ、あ」

自身の感情をコントロールできない事ほど臨也が怖いものはない。かたかたと震える体で何とかやり過ごそうとしていた。しかし先走りの伝うそれを擦り、解放を促してやれば、

「ぁあっ、――ッ!!」

背をしなやかに仰け反らせ、臨也が達す。白濁が臨也の腹までかかり、半端に捲られていた赤いインナーにもかかってしまった。嫌悪と意地から来る最後の抵抗として声だけは噛み殺したが、そんな臨也を追いつめる様に静雄は出された濃い白濁を指で掬い、そのまま臨也の窄まりへ指を挿入した。思わず目をきゅっと瞑り違和感と痛みに耐える臨也の表情に、隠しきれない不安の色が伺える。

「っひ…やっぱり、やめようよシズちゃん、無理、抜いて…っあ、抜い、てっ」
「安心しろって臨也、今くらいは優しくしてやるからよ」

窓から差し込む太陽の光は、ひたすら眩しかった。




あぁだから、俺は臨也が壊れ物だと知ったんだ







→後


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