短編集 その@
専用抱き枕 (跡部景吾)

何時からか、コイツは、俺の背中にしがみついて、寝るようになった。


今日も、昼食を食べた後、眠たい、と云って、俺の背中にしがみついて、寝ている。

寝顔すら、見れやしない。

「抱き枕みたいやな」

忍足の率直な感想に、俺は同意する。

「すー…」

密着した背中から、規律良い呼吸が伝わる。

「…んっ…」

小さく身動き。

もしかして、起こしてしまったのだろうか。

その不安は杞憂に終わる。

「気持ち良いんですかね?跡部さんの背中」

長太郎の言葉に、その場にいる全員が、首を傾げた。

ここは屋上。

陽射しが次第にキツくなりつつある季節。

それなのに、コイツは、真冬並の厳重装備。

幾ら、教室が冷暖房完備、とは云えど、着すぎなのでは、と思う。

しかし、そんな思いも、悪戯っ子の様な笑みを浮かべた、岳人の言葉に遮られた。

「しがみつけるなら、誰でも良いんじゃねぇの?」

その言葉に、興味が沸いた。

試しにやってみるか。

景吾は、自身の背中にしがみついている奏荼を、起こさない様にゆっくり離す。
そして、長太郎の背中に押しやる。

「―――…」

数十秒後、ふらり、と、長太郎の背後から立ち上がった奏荼。

漸(ヨウヤ)く、起きたか。

と、思ったのも束の間。

眠たそうに、コシコシ、と、瞼を擦りながら、くるり、と、視線を一周。

明らかに機嫌が悪い。

「…………」

ゴクリ、と、全員が固唾を飲んで見守る。

スタスタ、と、景吾の背中にしがみつくと、再び、眠りに落ちる奏荼。

「………跡部が良いみてぇだな」

亮の言葉に、全員が頷いた。

そんなある日の昼下がり。


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あとがき

跡部様は、後輩に甘えられると、無下にしなさそうなイメージです。

あくまで、私のイメージですケドね

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