短編集 その@
悩み (不二裕太)

『不二の弟』

そう云われるのが嫌だった。

兄貴は天才で、昔から何でも出来た。
だから、何時も周囲の奴等に云われる。

『天才、不二周助の弟』と。

誰も、俺を見やしない。

それが、凄く嫌だった。

けれど、アイツだけは、違った。


「なあ、桜井」

「はい。何でしょう?」

「嫌じゃねぇのか?」

「仰る意味が判りませんが?」

彼女は、小首を傾げている。

「桜井"妹"って、呼ばれる事が嫌じゃないのか?」

すると、彼女は小さく、笑った。

「ボクは妹ですから。構いません」

「え?」

「悩んでいらっしゃる様ですが…。不二さんは不二さんで、お兄さんはお兄さんですよ?」

「判ってるよ!!そんな事!!」

つい、大声になってしまう。

どうして、受け入れられる?
どうして、笑っていられる?

疑問は尽きない。

「この世で、聖ルドルフの"不二裕太"は貴方しかいません」

「――――!!」

「貴方には、貴方にしかないモノが必ずあります」

「俺にしか、ないモノ…」

「お兄さんを"ライバル視"する事は悪い事ではありませんが、過剰に反応するのは、貴方が、貴方を認めてないんですよ?」

「俺が、俺を認めていない…」

「はい。貴方は貴方らしく、振る舞えば良いのです。貴方は貴方。お兄さんは、決して、貴方にはなれないんですから」

―――――…なんだ。
そっか。
俺が、俺を認めないでどうする?
まずは、俺が俺を認めてやらないと…、先には進めない。

「ふふっ。それでは、悠ちゃん達と一緒に、ケーキでも食べましょうか」

彼女は、何事もなかったかの様に歩き出す。



双子だから、良く比較されて来たんだろうな。
まだ、俺はマシな方か。

今度は、逆に、お前の悩みを聞かせろよ。
俺が解決法を一緒に考えるからさ。





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あとがき

学園祭の王子様のイベントを拝借しました。
良く家の近所のコと、比較されたなぁf(^^;
裕太クンの気持ち、ちょっぴり判るなぁ。

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あきゅろす。
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