消えない虹の向こう側へ
こう見えて、従兄なんです
景吾の誘いを断って、はや数日。
なるべく、テニス部には関わらない様に心掛けていた。
奏荼は帰宅部所属。
勉強が終わったら、のんびりと自身の趣味に没頭したいのだ。

「えーと…確か、この辺だった筈…とあったー、青春学園中等部」

門構えの横に書かれている文字を確認する。

「本当に心配性なんだから」

奏荼は何の躊躇いもなく、ズカズカ、と他校に足を踏み入れる。
こう云う所は胆が据わっているようだ。
えーと、テニスコートは何処だ?
キョロキョロ、と周囲を見回せば。
視界の端に映るテニスコート。
お目当ての人物は、どうやらテニスコートにいるらしい。
奏荼は、小さくガッツポーズを決めると、すたすた、と歩き始めた。




パーン、パコーン…。
ボールを打ち合う音が聞こえる。

「ほうほう。人間観察に適しているぐらい静かだ」

フフフ、と笑う。
趣味に没頭したいが、いかんせん。
従兄に逢って、何とか生きている事を伝えて貰わなくてはいけないのだ。
厄介な用事は早く終わらせるに限る。

「お、居た居た」

奏荼は気配を消し、足音を忍ばせて、従兄に近付く。
そして、徐に、従兄の脇腹を指先で突いてみた。

「何をしている?」
「相変わらず無表情だな。少しは和気藹々と出来ないかい?国定クン」

冷ややかな眼差しにもビクともせず、へにゃり、と笑う。

「お前も人の名前をマトモに云ったらどうだ?」
「おや、間違っていたか。それは済まない、ハチミツくん」
「…………」
「ま、また違っていたようだね(^-^;」

2人のやり取りを見ていた部員達は、興味津々な眼差しで見つめている。

「青学の生徒じゃないね」
「あの制服は氷帝だよ」
「手塚部長と仲良いみたいですね」
「もしかして彼女?」

等と好き放題云っている。

「ん?」

どうやら視線が自分達に集まっているのに気が付いたようだ。

「部活中にお邪魔だったね。君のお爺さんからメールで呼び出しを受けてね」
「……知っている。お爺さんには元気だった事は伝えておこう」
「じゃあ頼んーーー…」

奏荼の言葉を遮る様に、

「お前さん誰だい?ウチの手塚と仲が良いようだが…?」

と、顧問らしき女教師が声を掛けてきた。


(((((((((グッジョブ( ̄▽ ̄)b!!!)))))))))


その場に居た全員がそう思った。

「「従兄(従妹)ですが」」
「えええーーーッ!!!」

その返答に驚きの声を上げた。

「こんな可愛い娘が!!!」
「手塚部長の従妹!!!」
「随分失礼な事を云うな、お前達」

怒りのオーラらしきものが見える。
が、しかし。
奏荼にとっては、そんな事はどうでも良いらしく、他の事が気になったのか、国光に尋ねてみる事にした。

「国風クン、国風クン。聞きたい事があるんだが」

クイクイ、と国光のテニスウエアの裾を引っ張る。

「奏荼、いい加減名前を覚えろ。国光だ」
「そうだったね。それは済まない」
「で、何だ?」
「どうして彼等は驚いているんだい?それに、可愛いと云っていたが、君がかい?」

すっとぼけた質問に、辺りは愕然となっていた。

「アハハハハ、面白い娘だね、手塚。可愛いと云ったのはお前さんの事だよ」
「???」
「彼女は自分には無頓着ですから」
「……竹光クン、話の内容が見えないのだが…?」

小首を傾げて、国光を見る。

「ーーーー…そして、人の名前を覚えられない欠点があります」
「なるほどね」

納得がいった。


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