消えない虹の向こう側へ
キリンと鶏
そんなやり取りの翌日。

「困ったな。届きそうで届かない」

どうやら、また、プリントを風に拐われた様だ。
届きそうで届かない、微妙な高さの枝に引っ掛かっている。

「キリンクンに頼もう」

何度、飛んでも届かない。
崇弘にメールを打ちながら、こう云う時って、ガッチャマン並みの跳躍力があったらなあ、等と愚痴っていると。

「どうかしたの?」

と、頭上から声が落ちてくる。

「大事なプリントが風に誘拐されてしまってね。悪戯な風に悩んでいる所だよ」
「プリントは見つかったの?」
「ああ。けれど、ボクの身長では届かないようだからね。だから、キリンクンに助けをーーー…」

奏荼に話し掛けた少年は、意図も容易く、プリントを取った。

「はい。これで良いのかな」
「ありがとう。助かったよ」
「ウス」

すると、奏荼に呼び出された崇弘が、後ろから声をかける。

「やあ。キリンクン。また拐われてしまってね。けれど、彼に取って貰ったよ」
「ウス」

嬉しそうに笑う奏荼に崇弘は、ほ、と胸を撫で下ろすものの、出来れば自分が助けたかった、と胸の内で呟いた。

「樺地。この人と知り合い?」
「ウス」
「へえ。君達はテニス部なのか」
「2年の鳳長太郎と云います」
「3年の桜井奏荼だよ。宜しく、鶏クン」
「にわとり…」
「違い…ます」

崇弘の突っ込みに、奏荼は苦笑いを浮かべた。

「どうやら、間違ってしまったようだね。済まない、ラッコクン。けれど羨ましいよ」

奏荼はしみじみ呟く。

「何がですか?」
「身長だよ。こればかりはどうしようもないからね。ではまたね。プリント、ありがとう」

奏荼はヒラヒラ、と手を振り、その場所から遠ざかる。

「か、変わった人だね」
「……ウス」

長太郎と崇弘は、遠ざかる奏荼を見送った。






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