消えない虹の向こう側へ
名前を覚えない奴
毎朝、氷帝学園中等部は、賑やかだ。

「キャーーーっ!!跡部様ーーーー!!」
「こっち向いてーーーーー!!」
「忍足くーーーん!!」

朝っぱらからご苦労様。
興味がなさそうに、窓から目を背ける。
親衛隊だか何だか知らないけれど、正直云って、ウザったい。
朝っぱらから、そんだけ体力使って、何が楽しいんだろうか?
ボクには全く理解出来ない。

「ねェ」
「ん?」

席の前に居た、クラスメートでもあり、幼稚園からの腐れ縁でもある、貞岡悠香に声をかけた。

「あのウザったい連中、黙らせて来ても良い?」
「止めなさい。アンタ、手加減ってもの知らないんだから」

悠香は慌てて止めるものの、本人はいたってやる気満々。

「煩いんだよ」
「仕方ないデショ。跡部様達の登校なんだから」
「……。誰だっけ?」
「…………その頭の中に入っているのは、脳ミソではなく、梅干しの種かね?」

ガシッ、と勢い良く頭を鷲掴みにされ、激しく揺さぶられる。

「興味ござんせーーーーん。てか、酔う」
「人の名前を覚えましょうね」
「えーーーーー」

奏荼は基本、興味がないと、名前を覚えない主義なのだ。

「何で人の名前を覚えない奴が、ウチの女子の学年首席なのかね」
「日頃の行いが良いから」
「自分で云うな」
「はーーーー、今日も麗しの跡部様を見られたわ(*^^*)」

ガタガタ、と奏荼の横の席に腰を下ろす。

「ストレス発散になるだろ」
「フーンだ。イケメンに興味が無い前に、人間にも興味が無い奏荼に云われたか無いわ💢」
「イケメン…と云うが、何が基準なのかさっぱり判らない」

それはそうだ。
彼女達は何を基準に、イケメン、と決めているのか理解が出来ない。

「あのルックスデショ、生徒会長で、テニス部部長デショ、それに跡部財閥の跡取りデショ、玉の輿を狙ってるオンナノコ多いんだから。それにテニス部はイケメンが多いのよ」

そんな言葉に、奏荼は、

「テニスはルックスでする球技だったか?何はともあれ、テニス部員達や、彼に同情するよ」

と、率直な感想を述べた。

「さて、奏荼クン。その同情した彼の名前を述べてみようか」
「確か、テニス部の佐々部クンだったかな?」
「「誰だよ!!その佐々部って!!」」

と、突っ込まれるまで、0.2秒。



「はーーーーー、ここまで人の名前を覚えない奴が居たのか。仕方ないから、説明会を開催して上げよう」
「興味ござんせーーーーん」
「梅干しの種並みの脳ミソに叩き込みなさい」

異常な程の眼差しに、奏荼は、

「お…お願いします…」

としか云えなかった。

「先ずは、うちのクラスの忍足侑士クン。氷帝の天才、曲者って呼ばれているわ。向日岳人クンとダブルスを組んでるわ。でその向日岳人クン。背は低いケド、凄い高く飛べるのよ」

意気揚々と喋っている彼女に、奏荼は小さく溜息を吐いた。

「で、宍戸亮クン。硬派でぶっきらぼうなんだけれど優しいわ。芥川慈朗クンは何時も寝てる。ケド寝顔は可愛いって評判。2年の鳳長太郎くん。彼はとても身長が高くて、女性には優しいのよ。日吉若クン。古武術を習っているみたい。下剋上が口癖。樺地崇弘クンは何時も跡部様と一緒にいるの」
「ほうほう」
「で!!!忘れちゃいけないのが我らが女子生徒の憧れの的の跡部景吾様。跡部財閥の跡取りで、生徒会長兼テニス部部長。何時も学年首席。ああ、麗しの跡部様」
「…………」
「さあ奏荼クン。彼等の名前を述べてみようか」
「確か、窓辺クンに鹿威しクン、相田クンに鶏クン。日和クンに、土地足りクン。キリンクンに、ガッチャマン」
「「誰だよ!!!」」

二人の突っ込みに、乾いた笑いを浮かべるしか無い奏荼であった。




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