消えない虹の向こう側へ
メダカくんは可愛い
お友達になったメダカくんと共に歩く。
メダカくんは、瞳をキラキラさせて、自分の夢や先輩達の事を話してくれた。
何処と無く、可愛い。
胸の中が、ほんわか、と温かくなる。
まるで、キリンくんと歩いているかの様に感じる。
でも、ボク一人で戻れるって云ったのに、
「アンタ、何かさ、ほおっておけねェんだよな」
なんて云われてしまった。
そんなに、頼りないのだろうか。
メダカくんより年上だ、と云うのに。
少しばかり、ショックを隠せない。
「そっちじゃねェって」
「え?」
しまった。
考え事に夢中になり過ぎた。
間違った道を進みそうになった。
メダカくんは苦笑いを浮かべて、
「手」
躊躇いがちに、手を差し出して来た。
意味が判らず、小首を傾げると。
強引に、手を繋がれました。
「迷子防止」
「メダカくん……?」
「アンタ、手冷てェ」
「メダカくんは温かいね」
「…!」
ふわり、と、笑う奏荼に、赤也は照れ臭そうに笑う。
[この笑みは犯罪だッ!!てか、こんなに無防備なんだから、あのド派手な部長とか、山吹のアイツとかにゃ気を付けないと……。コイツ、喰われちまう!!!]
赤也は赤也で、こんな"気持ち"になったのは初めてだった。
最初はミーハー女子が忍び込んだと思った。
けれど、脱出ルートなんて云うから、変な奴、と思った。
歩きながら、ある程度話を聞いていると、こいつの兄貴達の気持ちが痛い程判る。
もし、こいつが俺の身内なら、俺でも、同じ事をしただろう。
ーーーーー……守ってやりたい。
そんな気持ちにさせられる。
赤也は黙ったまま立ち止まり、考え事に耽る。
すると、ポンポン、と、奏荼の肩が叩かれる。
クルリ、と、振り返ると。
「うわっ、凄い可愛い娘発見」
先程まで考えていた、"要注意人物"の内の一人が、機嫌良さげに奏荼に話しかけている。
「俺とお茶でもしない?」
「千石さんッ!!」
赤也は慌てて、奏荼を引き寄せ、背中に隠す。
奏荼はきょとん、としながら、赤也を見る。
「コイツをナンパしないで下さいよ」
「あれ?切原クンじゃないか。この娘、君の彼女?」
「かのっ……!」
かぁあっ、と、頬を赤く染める赤也。
「メダカくん、メダカくん」
「何スか?」
ドキドキ、と、胸が高鳴る。
「彼は何がしたいんだい?てか、可愛いと云っていたが、君が可愛いのかい?」
素頓狂な言葉に、赤也と清純は呆気に取られる。
「アハハ。面白い娘だね。可愛いと云ったのは君の事だよ」
「ボク???」
小首を傾げて、赤也を見る。
赤也は項垂れながら、「アンタの事ッス」と、奏荼に告げた。
「ボクはメダカくんの方が可愛いと思うがね」
「可愛いなんて云われても嬉しくねェ」
「そうなのか……。キリンくんに云うと、照れているのか、微かに頬を赤くするのだが……。そうか……。"可愛い"は、男の子に対しての誉め言葉ではないのか……。言葉は難しい」
しゅん、と、項垂れながら呟く奏荼に、
「切原クンは嫌みたいだけど、そのキリンくん?は嬉しいんだよ」
「………ところで、君は誰だい?メダカくんの知り合い?」
「顔見知りッス」
「俺は山吹中の3年、千石清純。君は?」
「………メダカくんの彼女って云ったら、君はどうする?」
「なっ!!!」
かぁあっ、と、頬を赤く染め上げ、口をパクパクさせながら奏荼を見る赤也に、奏荼はクスクス笑う。
どうやらからかわれたらしい。
「やっぱり、メダカくんは可愛いね(*^^*)」
「からかうなよっ(><)」
「俺の質問に答えてよ。名前は?」
「氷帝学園3年、桜井奏荼だよ。せんたくくん」
「せんたく………」
「じゃあまたね。メダカくん、行こうか」
名前を呼び間違えられた清純は、その場に呆然と佇み、赤也と奏荼は、すたすた、と、その場を後にした。
「何であんな事云ったんスか?」
「あんな事?」
小首を傾げて、赤也を見る。
赤也は、小さく溜息を吐くと、
「俺の彼女って………」
「メダカくんは嫌だったのかい?」
「嫌とか、そうじゃなくて……」
「メダカくん、好きな娘が居たのか。だったら悪い事をしたね」
「そうじゃなくって!!」
「???」
頭に?マークを浮かべている奏荼に、赤也は盛大な溜息を吐いた。
「???」
奏荼はどうして、赤也が溜息を吐いたのか、全く理解出来ないでいた。
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