消えない虹の向こう側へ
メダカくんに逢いました
海音が帰った後、国光に案内された部屋に荷物を置いて、奏荼はホテル内を探索していた。

「絶対に脱出してやるッ」

冗談じゃない。
詐欺まがいな行為で、"テニス部マネージャー"にさせられてしまった。
こんな下らない合宿なんかに参加したくない。
この連休を利用して、冒険の旅に出ようって考えていた。
それなのに、その思いは砕かれた。
なら、強引に出るしかない。
奏荼は、足音を忍ばせて、非常階段、及び、出入口付近を調べる。
人の出入りが少ない場所を選んだ方が、人目に付かない。

「おい」
「ふぎゃっ!!」

いきなり呼び掛けられて、奏荼は素頓狂な悲鳴を上げた。

「猫みてェな悲鳴を上げんなよ」
「あ〜、吃驚した」

ドキドキドキ、と、激しく脈打つ胸を押さえて、奏荼はふぅ、と、深呼吸。
天然パーマの、まだ幼さが残る少年が、奏荼を睨む。

「アンタ、こんな所で何してんだよ?」
「ホテル内の下調べ」
「下調べ?」
「最短脱出ルートを確定させる為さ」
「プッ……変な奴」

笑われてしまった。

「俺、立海大2年の切原赤也。アンタは?」
「ボクは、氷帝学園3年、桜井奏荼だよ。宜しく、メダカくん」
「赤也!!!」
「す、すまない。ボク、名前を覚えるのが苦手なんだよ」
「てか、アンタ、先輩なのかよ……信じらんねェ」
「言葉遣いは気にしなくて良いよ。赤メダカくん」
「…………赤也だって(--;)」

激しく溜息を吐かれてしまいました。
メダカくんは、「もうメダカで良いです」と、肩を落胆させていた。
何となく罪悪感。
キッチンを借りれるなら、メダカくんの為に、クッキーを焼いてあげよう。




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あきゅろす。
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