消えない虹の向こう側へ
強引にマネージャーにさせられました
とある、大きなホテル前に、奏荼と海音が、居た。
その理由は、テニス部の合宿に参加する為だ。

「どうして、部外者のボクが参加者なんだろうね。一番目の兄上」
「仕方ないだろう?兄上達、全員が海外での仕事になったんだから。それに、奏荼は部外者じゃないだろう」

海音は苦笑いを浮かべながら、奏荼の髪を撫でる。
奏荼は、「むぅ」と唇を尖らせて、海音を睨む。
それもその筈。
この大きなホテルは、テニス部の宿泊施設。
帰宅部の奏荼には関係無いのだが、現に自分はここにいる。
それが理解出来ない。
それには、大きな理由があった。




◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆




「お呼び立てして申し訳ない。竜崎先生、榊先生。そして、跡部くん、国光くん」

海音から呼び出しを浮けた4名が、海音の事務所である『モダン・ジュール』の応接室に案内された。
やはり、モデル事務所だけあって、流行の物を然り気無く飾っている。

「実はね、君達テニス部の合宿に奏荼を参加させて欲しいんだ」
「ちょっと待って下さい。桜井さんは部外者です。部外者を参加させるのは……」
「理由を教えて下さい」
「俺達三兄弟が、芸能人だって事は知ってるね。この大型連休、海外での仕事になってしまったんだよ」
「じゃあ、奏荼は……」
「一人で日本に残る事になるね」

その言葉に、四人は黙り込む。

「一緒に連れて行く事は……」
「出来ないんだよ。飛行機関係は、パニックを引き起こすからね。理由は、国光くんと跡部くんは判っているね?」
「………なら、うちで奏荼を預かります」

国光の言葉に、海音は首を横に振る。

「それは出来ない。国光くん、君が居ない間、食事・睡眠を全くしなくなるんだよ」
「!!」
「それに、歯止めとなる物が無くなるから、時間を問わず、人間観察に夢中になってしまうからね」
「我々に、彼女を監視して欲しい、と云う事ですか?」
「手っ取り早く云うと、そうだね。国光くんや跡部くん、樺地くんが居るから、奏荼も安心するだろうしね」
「………確かに」
「手前勝手で申し訳ないがーーー……」
「なら、桜井さんをテニス部のマネージャーにする、と云う条件でお引き受けしましょう」
「無条件、とはいかないね。良いだろう。奏荼は俺が説得するよ」

海音は苦笑いを浮かべながら、彼等を見つめていた。
奏荼をテニス部マネージャーにする事によって、正式な参加者にしてしまえば、誰も異論は云わない。そして、奏荼の安全も確保される。
本当なら、連れて行きたいのが本音。
けれど、錯乱してしまうのが目に見えていた。
まだ、事故のフラッシュバックが、奏荼に牙を剥いていたのだ。

「跡部くん、国光くん。済まないね」
「いえ……。奏荼は?」
「雪斗が見てるよ。一人にすると、ふらり、と、出て行って、帰って来ないからね」
「奏荼をうちで見る事は出来ませんか?」
「……そうしたいのは山々なんだけれどね。奏荼が迷惑をかける、と云ってね。拒絶するんだよ」
「そうですか……」
「奏荼の事、宜しくね」
「「はい」」

海音は、太郎より入部届を受け取ると、言葉巧みに奏荼に署名させ、景吾に提出させたのである。
が、その事実を知った奏荼は、「詐欺だぁあッ!! 」と、叫んだのは云うまでもなかった。



◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆



「詐欺だぞ。一番目の兄上」
「詐欺じゃないよ。ちゃんと読みなさいと、兄上は云ったよ」
「う〜………」

ホテルのエントランスに入り、海音と奏荼の口論が始まる。

「奏荼」
「桜井」

エントランスにて、奏荼を出迎えたのは、国光と、スミレ。

「ハチミツくん!!君からも云ってくれないか。ボクにはマネージャーなんて勤まらないから、今すぐ帰れって!!」
「では預かります」
「ハチミツくん!!君もグルなのか!!o(T□T)o」
「人聞きが悪いね(--;)」
「ここには国光くんや、跡部くん、樺地くんがいるんだ。安心しなさい」
「ーーー……じゃあ、ハチミツくんと一緒の部屋が良い」
「奏荼!!」
「それがダメならキリンくん」

一難去って、また一難。
奏荼の無茶降りが始まる。

「それが出来ないなら帰る」
「……態と云ってるな」
「……………奏荼。兄上も怒るよ」
「嫌なものは嫌だッ!!!」
「桜井。一緒の部屋にするのは出来ないが、右隣の部屋が手塚。左隣の部屋が樺地だ。それで妥協してくれないかい」
「………ハチミツくんの部屋に遊びに行っても良い?」
「構わないよ」
「………判った。我慢する」
「竜崎先生」
「仕方ないだろう。強引に引き止めた後、脱走されたら困るからね」

国光の抗議は却下。
奏荼の考えを見透かしたように、囁かれる言葉に、国光は盛大な溜息を吐いたのは、云うまでもなかった。





[*前へ][次へ#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!