消えない虹の向こう側へ
勉強会はサロンで
奏荼の名前が覚えられない原因を聞いた翌日から、景吾達は、名前を呼び間違えられても、優しく訂正するようになった。
けれど、相変わらず、崇弘の事は『キリンクン』、景吾の事は『部長クン』であった。

「部長クン(--;)そんなに見つめないでくれないか。非常に食べ辛いのだが…」
「俺様が誰を見ようと、俺様の勝手だろうが」
「それはそうだ。けれど、嫉妬と憎悪に満ちた視線付きと云うオプションは要らないのだがね」

今日は珍しく、家庭科実習の時に作ったマフィンを、サロンにて食べていた奏荼であったが、事もあろうか、景吾達、テニス部レギュラー達に見つかり、同席を許してしまう羽目になった。
しかも、サロンに居た女子生徒達は、奏荼に対し、羨望と嫉妬の眼差しを向けている。
奏荼はそれが気に入らないのだ。
来たかったら来たら良いだけなのに、こんな疎ましい視線を浴びせるなんて、あり得ない。

「キリンクン、鶏クン、部長クン達を連れて、部活に行きたまえよ」
「ハン、今日は水曜で部活はねェがな」
「そうですか。なら、ボクが退散するか」
「……ウス」
「ん?判らないトコロがあるのかい?」

崇弘の機転で、奏荼の退散を防ぐ事が出来たのだが、いかんせん。
いきなり、勉強会が開催されてしまったのである。

「丁度良い。来週辺りテストがあるからな」
「俺達もやるのかよ!!」
「当然だろ。全教科のテスト、80点以下なら、罰を与えるか」
「冗談…やなさそうや」
「クソクソ!!」
「まあまあ。丁度ここには、3年の学年トップが2人居る事ですから、たまにはこう云う事も良いと思いますよ」

長太郎の云う通り、ここには、学年トップが2人居るのだ。
判らないトコロは聞けば良い。
特に、奏荼のヤマは大抵当たるので、テスト前には良くお世話になった事を岳人は思い出した。

「奏荼、今度のテスト、どこ出る?」
「数学なら、テキストの5ページ〜8ページ、特に応用が出ると思うよ。英語は、ヒヤリングがメインだね」
「岳人?」

侑士が不思議そうな表情で岳人を見る。

「コイツのヤマ、当たるんだぜ。各教科の先生の癖を見抜いてるからな」
「向日💢自分の実力でやれ」
「………あっちはほっておこう。キリンクン、ここの問題は、さっきの公式を応用するんだよ」

奏荼は基本、頼られるのは嫌いではない為、ついこうやって教えてしまうのだ。
サロンで開かれた勉強会。
このお陰かどうかは定かではないが、レギュラー全員がテスト80点以上を獲得し、罰ゲームは行われなかった………らしい。




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あきゅろす。
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