消えない虹の向こう側へ
お茶でもどうだい?
「ここで下ろしてくれないか?」
「……」

リムジンは、ゆっくりと、奏荼が指定した場所で止まる。

「奏荼!!」

呼ばれて振り返ると、そこには、モデルのkaitoの姿があった。

「一番目の兄上」
「…何処に行っていたんだい?」
「ハチミツくんの所。部長クンとキリンクンが迎えに来てくれたんだよ」
「部長クン?キリンクン?」

海音は不思議そうな表情で、奏荼を見る。
すると、景吾達はリムジンから降りると、ペコリ、と頭を下げた。

「…部長クン、キリンクン。お茶でもどうだい?又、お菓子を焼いたんだよ」
「…いや、自分達は…」
「遠慮する事はないよ。奏荼の学園生活も聞きたいしね」

海音は、にっこりと笑うと、景吾達を見る。
どうやら、断りを入れられる雰囲気では無さそうだ。

「ほら、キリンクン、部長クン、こっちだよ」

嬉しそうに笑う奏荼に連れられて、景吾達は、リビングまで上がった。

「適当に掛けて。今日はクッキーを焼いたんだよ。一番目の兄上も食べる?」
「そうだね。俺はコーヒー。彼らは紅茶。奏荼、覚えたかい?」
「一番目の兄上はコーヒー、部長クン達は紅茶だね。うん、覚えた」

微笑ましい会話だが、どこかしら違和感を感じた。

「えーと、跡部クンが君で、こっちの彼が樺地クンかな」
「!」

自己紹介も何もしていないのにどうして、自分達の名前を知っているのだろうか。
景吾の眉間に小さなシワが寄った。

「貞岡悠香。彼女とはメル友でね。大抵の事は彼女から聞いているよ」
「………」
「君達の中で、俺に聞きたい事が有りそうだったから誘ったんだけど、違ったかな?」
「…………」

3人の間に、奇妙な沈黙が流れた。



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あきゅろす。
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