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サイレントガール
サボテンは彼女の周りに咲いた




奏ちゃんといる時間は、とても楽しい。

出会ってから、もう結構経つんだね。


簡単な単語とか、少しずつだけどわざわざ書かなくても口の動きでわかるようになってきた。




今日、この時間。

自習が続くからということで、各自勉強。

俺達は屋上へ足を運んだ。




誰もいない。





腰をおろして、3人で話し始めた。

もうすぐテストだね。とか、そうしたら部活がないね。とか。






「勉強してる?」


「もちろんだ」






奏ちゃんもコクコクと頭を振ってて可愛らしい。

でも、眉尻を下げてパクパクと口を動かす。


どうやら、テストはいい結果を残せないらしい。






「難しいもんね、ココの問題って」






そしたら、またパクパクと口を動かしては身振り手振りしてくる。





「英語なんて、そんな難しくないだろ…」

「日吉。ヒトには得意・不得意があるんだし…」


『2人は、いつも何位なの?』





首を傾げてくる奏ちゃんは、少しドキドキしているようだ。

俺達を交互に見てくる。





「まぁ、学年10位以内くらいじゃないか?」

「うん、俺もそれくらいかな。」




あ、ショック受けている顔。

なんか涙目で訴えているけど…ごめん、早すぎてわからないや……




「失礼な。ガリ勉じゃない。努力していると言え」




おー…今の早口わかったのか。


すごいな、日吉…。




ガチャ…



「…なんや、日吉に鳳やないの」

「あ、こんなところに居やがったか、長太郎!」


「宍戸さん!!」





思わず、声をあげてしまった。

一目散に宍戸さんの所に向かった時に、忍足先輩がボソリと呟いた。





「なんや、ナンパ中やったんか?」


「違います。忍足先輩と一緒にしないでくださいよ…」





はぁ。と溜息を吐く日吉に思わず苦笑してしまう。

奏ちゃんはというと…見事に固まってました。




「奏ちゃん?大丈夫?」




パタパタ手を目の前で振ってみると、ビクッとして。

戻ってきた。



コクコク、と頷いて。でも、少し怖いのかな…ι

皆をじーっと見てはサッと目線を下にしている。





「びっくりさせてしもたな。忍足侑士や、よろしゅう」





忍足先輩は腰をかがめて、奏ちゃんに目線を合わせながら言った。

下を向いていた奏ちゃんは顔をあげたら忍足先輩の顔が近くにあってびっくりしたんだと思う。

俺の制服をギュッと握ってきた。



うん、可愛い…





ぐいぐい、引っ張ってきて「何?」と聞いたら、ぱくぱくしてきた。

代わりに言ってくれってことだよね?





「“はじめまして忍足先輩。雪野奏です。”…と。」





ハニカミながらもペコリ、お辞儀をする奏ちゃん。

少しびっくりしている忍足先輩は、微笑みながら「よろしゅう」と言いながら奏ちゃんの頭を撫でていた。

そして俺に視線を向けてきて。



無言だけど、なんかわかってしまった。

天才と呼ばれる故か。それともまた別の意味でなのか…





「奏。忍足先輩と話すと妊娠するぞ」

「!?」

「んなわけあるかい!」





日吉の言葉を真に受けた奏ちゃんはすぐに俺の後ろ…忍足先輩から隠れるようにひっついた。

純だとは思ったけど…ここまで日吉の言葉を真に受けなくてもいいのに。嘘だよ、ウソ。

でも、忍足先輩のことだ。手を出させないためにもこうしたほうが安全かもしれないね。





「えっと、奏ちゃん。こっちにいる先輩が宍戸さん」

「おぅ!よろしくな!」




ぱくぱく、口を動かしながらお辞儀する奏ちゃん。

多分宍戸さんにも伝わっていると思う。

俺を見る奏ちゃんはまたぱくぱく動かして。



でも、長いのは本当にまだ難しいから読み取りにくい。困った表情を浮かべてしまったんだと思う。

あわあわしながら携帯を取り出して打ち込み始めた。




「ご、ごめんね、奏ちゃん…」




ふるふる、首を振って、俺に画面を見せてきた。




――チョタくんとピヨが、言ってた通り、優しい人たちだね――


「うん。そうでしょ?」




ニコニコしている奏ちゃんは、あまり人と接するのが怖かったらしい。

自分は他の人とは違うから。と言って。

だから、交代で一緒に食べたりしている。




「これからは、皆と食べようね」




俺がそう誘ってみる。

お昼、皆と食べたほうがおいしいと思うから。


少し迷いを見せた奏ちゃんだけど、へらっとした笑みを見せて、頷いた。





サボテン
(暖かい心)


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090924




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