[携帯モード] [URL送信]

サイレントガール
シオンの花束を。






雲ひとつないこの空の下。

今日もテニス部レギュラー全員でお昼。

もちろん、俺の隣には宍戸さん!




「なあ、長太郎…」

「はい!なんですか?宍戸さん!」

「ちょっと…近すぎねぇーか?」



何言ってるんですか。

そんな今更なこと!




「気のせいです!」

「そ、そうか…」



宍戸さんはまっすぐで、俺が尊敬している一人。

少し頭が弱いのはご愛敬です!




「おい、鳳」



今日も俺様まっしぐらな部長の跡部さん。

メンバー全員を見渡して、誰かいないことに気が付いた。




「日吉はどうした」

「……あー…えっと。」



日吉は、此処に来れない。
ちゃんとした理由もあるんだけど、口止めされている。

いや、それは俺も同じなんだけど。


同じ2年として…頭を悩ませてしまう。
なんて言えばいいんだろうか。下手な嘘はつけないし、ね。




「ちょっと用事があるので今日は無理だと…」

「…そうか」

「はい」

「………」

「………」






……ん?


跡部さんらしくないな。

もっと「アァン?」とか言って突っ込んできそうなのに…

でも、このほうが助かりますけどね。



「この前は、お前が来なかったな。交互に来ていないとはどういうことだ?」

「……たまたまです!」

「たまたま、なぁ…確かに最近2人が揃っている時あらへんわ」

「忍足先輩まで……ι」





特にこの2人は鋭いから…
本当に困るよ。宍戸さんみたいに素直に聞いてくれないからなあ…。




「オイオイ長太郎。何か隠し事か?」

「い、いえ!」



両手を振って否定する。

すみません、宍戸さん…こればっかりは…。

俺と日吉は今…大切なものがあるんです……。



それは、宍戸さんと同じくらい大切で…



かけがえのない人―――……





(早く明日にならないかな…)








■□





「奏」





鳳と日ごとの交代で会いに来ている。

彼女は、いつも一人だ。

このクラスには、テニス部が誰ひとりいない。




窓際の一番後ろで座っている奏は、俺に気づくと手を振ってきた。

待ってて。と言いたいようだ。

騒ぐ女子生徒をほっといて、奏が来るのをドアで待つ。

ノートを取り出してパタパタ走ってくる奏と一緒に空き教室へ移動した。

屋上は、テニス部が使っているから無理。


2人、向き合うように座ってお昼を食べ始める。

奏は持ってきたノートを開いて、ペンを走らせていく。

まっさら、何もかかれてないページ。



「それ、書いて平気なのか?」





ピタリ、手を止めて俺の方を向く。

うん。と頷いて、書き始めた。






――ひよしくんは チョタとなかよし?――





「……さぁ、お前はどう思う?

それより、いつから鳳のことチョタと言い始めたんだ?」





――なかよし、とおもう。

きのう、おーとりってむずかしい って。だから、チョタでいいって。――



「………」




――ひよしくん、これからは、ピヨ、っていっていい?――





「……鳳に言われたのか?」





――ううん。ファン――





あぁ。


なんか納得だ。




「やめろ」





――ピヨー。――




嬉しそうに書いて、その隣に何か書き始めた。

それ、もしかしてヒヨコか…?ヒヨコなのか?




「オイ、何書いてる…」




顔をあげて、パクパク口を開いた。





『 ピ ヨ 』


「はぁーーーー…」



もう、ため息しか出てこない…




ぱたぱた、




ん?




――しあわせ、にげるよ――




「誰が逃がしてると思ってる…」





きょとん、としている奏さんは、少し考えて。

って、考えるなよ。




お前だ、おまえ。






――ピヨ――




ああ、


「下克上だ…」






シオン
(ご機嫌よう)



NEXT...
090906



あきゅろす。
無料HPエムペ!