幸せ音色 1 たまたま、病院内を歩いた時じゃ。 遥と出会ったのは…。 丁度病院近くを通る時があって。 ついでじゃ、幸村の所に寄ろうとした。 いつも、全員で来る時と同じように歩いて行って。 彼女がいた。 廊下の少し先…とはいえ、幸村の病室とは違う方向なんじゃが、壁に寄りかかりながらズルズルとしゃがみこんでいた。 「……ハッ、ハァッ…」 息切れ。 はじめはすぐに誰か来るじゃろ。…そう思った。 でも、誰も通りやしない。ましてや、看護師は近くにいない。 その人の姿が、幸村とかぶった。 早まる鼓動と、幸村の名前を呼ぶ…レギュラー。 気づけば、倒れたその彼女の所に足を進めていた。 「病室、どこじゃ?」 身体を起こしながら、顔をのぞかせる。 顔色が、悪いなんてものじゃない。 「この…先…2…っ、」 この先? 2? どういうことじゃ。 とりあえず横に抱きあげて “この先”を進んだ。 ネームプレートを見て、女の名前の部屋があった。 あそこから2つ目の、部屋。 向い側の部屋は、男の病室のようじゃし…ここじゃな、多分。 「櫻井遥……お前さんの名前か?」 ゆっくり、頷いている。 よし。と思い、ドアを開けてベッドに寝かせた。 ベッドのブザーを押して、窓に寄り掛かる。 このまま行ってもいいんじゃけど…気になるしのぅ。 息苦しそうにしている彼女は、うっすらと汗をかいている。 目にかかっている前髪をどかそうとしたら、ゆっくり目を開けて……宙をさまよう手。 不安なんじゃろか… 手を掴んでみたら、弱々しく握ってくる。 パタパタ、走ってくる音が聞こえて、看護師だろう。と頭をあげた。 荒く扉を開けると、血相を変えた看護師が2人。 「櫻井さん!意識ありますか!?」 一人が必死に声をかけている。 そして、もう一人の看護師が俺に話しかけてきた。 「櫻井さんの知り合いの方ですか?」 「いいえ。違う病室のお見舞いに来たんだがのぅ…」 いきさつを話しておいたら、深くお辞儀された。 本来なら、このまま幸村の病室に向かいたいところなんじゃけど……手を離してくれなさそうじゃ。 椅子を用意されて、目の前で処置を取っている看護師。 見てはいけない気がして、窓の外に目を移した。 なんで、こんなことしとるんかのぅ… [→] |