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幸せ音色
手術、祈りて





学校を早退して、向かったのは病院。



今日、遥の手術が行われる。




自分が手術を受けるわけでもないというのに







不安。



緊張。







恐怖。








希望。










色んな感情が入り混じる。













「遥…」

「!…雅治君。来てくれてありがとう。」





ふんわり、笑う遥。

待ちわびていた。
そんな声で言い、手を伸ばした。


俺はその手を掴んで、指を絡める。




「無理して、笑わなくていいんじゃ…」

「……うん」

「頑張りんしゃい。」





やさしく、言う。

元気づけられた遥は、嬉しそうに顔を緩めた。







「手術に成功して、俺のテニス…観に来るんじゃ」






あえて、観に来る。と言う言葉。


遥の手に力が入った。








「ねぇ、雅治君。」

「ん?」

「ずっと、言いたいことがあったの。

私ね、雅治君のこと「遥。」






唇に、人差し指をつけて黙らせる。






「続きは、手術が終わったら聞くぜよ」

「…いじわる。これじゃ、絶対に死ねないじゃない」

「ククッ そうじゃなきゃ困るぜよ。
オレも、遥に言いたいことあるき」





だから、死んだらいかん。


生にしがみつきんしゃい。





「櫻井さーん。そろそろ時間です。移動しますよ?」

「…はい」






緊張から、手に力がはいっている。


仁王は、遥の髪をかきあげて額に口づけをした。





「手術が成功するおまじないじゃ」

「っ///」




「まぁ!お熱いのね」





看護師がクスクスと笑いながら2人を見る。

遥は恥ずかしそうに顔を下に向けた。

何を恥ずかしがる理由があるんじゃ?


でも、遥と俺はきっと両想いぜよ。

それが解っててからかうのは、意地悪じゃな…。





「遥。これを持ちんしゃい」

「……何?」

「髪留め。いつもしとるやつじゃ」





今さっきまで結っていた髪は首にかかる。


手の上に乗せて、やさしく遥の手を握らせる。

手術室まで、一緒にいられない。



だから、お守りじゃ。






カラカラと台に乗せられて運ばれる遥。








「待ってるぜよ、遥…」


「うん。行ってきます。」







病室から出ていく遥。

音も遠ざかって聞こえなくなった瞬間、気が抜けたようにズルズルとしゃがみこんだ。



遥は俺以上に緊張しているかもしれない。

そう思うと手が震える。




成功して、無事に戻ってくることをただひたすら、祈った。




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