右手に銃を、左手に花束を
少女たちは物語の始まりを知らない
新聞社『デイリー・デイズ』を出たとき、既に日も傾いていた。
朔弥の手に持つ書類をキノに渡し、一度ホテルに戻ることとなり、一般人にまぎれてDD新聞社を出た。
追手が来るのではないだろうか。
注意深く気を配っていたが、それらしき人物も気配なく、正面からホテルの中に戻っていけたことに社長に感謝した。
部屋に戻ってから再び入念に部屋を調べてから腰を落ち着かせた。
書類は分かりやすく、かつ手に入れた情報とあいまいなものが入り混じっている。
それでも…
「よく調べてある…。」
「だろうな。あそこはそういうところだ…」
受付の後ろで忙しく働いていた人たち…。
傍らには銃が顔をのぞかせていた。並大抵の人間ではないだろう…。
「それで」
「……」
「不死者と関わっているのか?依頼人の方は。」
分厚い資料を1枚1枚目を通して、ため息ひとつ零す。
「……普通の人間みたい」
でも、骨が折れるのはターゲットの方だ。
不死者をどう殺せば良いと?
ただの不死ならば老いるのを待てばいい。
しかし、これらは違う。歳もとらない、しなない
朔弥は眉を寄せて考えを巡らせていく。
「キノ…。こっちをあらって」
依頼人の資料をすべて渡した。
キノはものすごく嫌な顔をしながら、分厚くて重い紙の束を受け取る。
もともと文字を読むのは嫌いらしい。仕事となれば別なのだが…。アナログ式の資料はどうも目が堪えるらしい。
そんなキノを気にすることもなく、朔弥はもう一方…ガンドールファミリーについて書かれている資料をじっくりと読み始めた。
動き始めるのは夜中。それまでにこの資料のことをすべて理解しなければならなかったのだ。
ホテルが準備する夕食を簡単に済ませると、2人は再び資料に没頭して部屋には紙の捲る音と、パソコンの起動音だけが耳に届く。
たまにキノがキーを打ったり、朔弥もカタカタと音を立ててパソコンと睨めっこをしている様子がうかがえる。
ガンドールファミリーと親しいのはマルティージョファミリー…彼らも『不死者』らしい。
どんな経緯で『不死者』になったのかは不明。しかし、ガンドールに襲撃があったら駆けつけてくるだろう。
複雑ながらも、交流関係はさまざま。
不死者だらけの中、殺りあうのは朔弥に不利がある。
ただ突っ込んでは自殺も同然。それはどうやってでも避けたいものだ。
「……、朔弥。とんでもないことに気付いた。いや、とうとう、見つけた」
キノの口は震え、まるで信じられないものを見ているかのような表情をしている。
歓喜に震えているような感じにも見えなくもない。
朔弥はベッドから離れてキノの所へ足を向けると、1人の女性の写真、素性などが書かれた文面と、パソコンに書かれている名前。
手厳しそうな顔立ちをしている女性を指差して、朔弥を見る。
「落ち着いて聞いてくれ。やっとみつけたんだ…お前の大切な人を殺した裏の人間が。」
それが、コイツだ。
少女たちは物語の始まりを知らない
(おお、落ち着け朔弥!)
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111205
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