[携帯モード] [URL送信]

右手に銃を、左手に花束を
少女たちは密かに群れの中へと足を踏み出した




一人の幼い少女が空を見上げる。
飛行機が空へと旅立っているのを見ながら、まぶしく照りつけてくる太陽に目を細めた。
帽子を被りなおして、自分の名を呼ぶ男へ視線を向けて歩き出す。
衣食住をイタリアで過ごしてきた少女は、ある用事でアメリカに足を踏み込んでわずか数十分。

「置いていくぞ」

手を差し出してきた同行人の男の手をつないで、歩き出した。
通行人は物珍しさからだろう、東洋人の少女とイタリア人の男が歩くのは、どうも異質に感じるらしい。

真っ黒い瞳と、腰までとはいかないが、長い髪が風に揺られている。観光のような荷物に、恰好。
少女の名は雲雀朔弥。
イタリアでボンゴレというマフィアの幹部でもあり、世には正体不明の「黒猫」「漆黒の舞姫」でもある。


「ってお前の気まぐれで来たけどよ…。」



アメリカの空港から出て、街を歩きながら男は口を開いた。
同行人の名前はキノ・アグウェル。イタリアの情報屋で、数年前からの付き合いだ。


「いいのか?こんな依頼引き受けて。」
「別に…。だから依頼の日よりも早くこっちに来た。」



キノはアメリカの情報はイタリアに比べて疎いという。
なので、こっちの情報に詳しいところに向かうこととなった。
朔弥は黙ってキノの隣を歩く。


至って普通の街だ。
活気はあるし、聞いていたよりも物騒ではない。



「朔弥…普通にしろよ?」

「……」


あまりキョロキョロしていると不審がられる。
しかもまだ小さな子供が観察するような目で見るのは怪しいに決まっている。


ホテルでチェックインし、一般人を装うようにそれなりの服を着て街を歩くことになった。
依頼のあった場所に行くのは情報を貰ったあと、夜に行くことにして。
宛がわれた部屋ですぐに監視カメラ・盗聴器類の者がないか2人で確認してから着替えに入る。

朔弥は目立つ。
黒髪の少女という人物はアメリカに溶けにくい。
トランクケースの中から変装のセットを取り出して黒髪を隠した。
カラーコンタクトを入れて黒い瞳を隠し、服の上から黒いコートを纏う。


「依頼はルノラータファミリーのドンが直々…弱小ファミリーの殲滅を依頼するとは、ね…」
「………」
「いつ、決行するんだ?」
「受けるつもりはない」
「は!?」
「…胸騒ぎがする……」
「珍しいこともあるんだな、緊張か?」


知らない。
そうつぶやくと、最小限の荷物をもってドアへと向かい、キノもポケットに片手を突っ込んで朔弥に続いて部屋を出た。





少女たちは密かに群れの中へと足を踏み出した
(まずはなんか食おうぜ。腹減ったろ?)
(……うん)

NEXT...
111106

[NEXT#]

第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!