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兄妹シリーズ
私のお兄ちゃんはヘタレ(仁王)




「ちょ、返してー!!」

「いやじゃ。それより答えんしゃい!」



テニス部の部室前。

銀色の髪をした2人は向かい合っていた。
しかも険悪な空気を纏っているようで、誰も近付きもしない。



「お兄ちゃんには関係ないでしょ!」

「認めん…!認めんからな!」



仁王雅治の妹、仁王妃奈。
頬を膨らませて声を荒げる妹の眼にはうっすらと涙が浮かんでいる。仁王はたじたじになりながらも、妹の私物を返そうとしないのだ。
両手でしっかりと持っているのは、携帯ストラップ。



「私にだって彼氏はできるし、いつか家を出るんだから」

「あーーあーー聞こえん聞こえん」

「お兄ちゃん!!!」



妹を溺愛している彼にとって自分以外の誰かの話、ましてや男なんて許さない。



「仁王、さっきから煩いよ」

「幸村…」

「あ、精市…」



あまりの煩さに部室から出てきた幸村。
にっこりと、笑みを浮かべているが、目が笑っていないのにお気づきだろうか。

仁王は気まずそうな顔で、視線を泳がせる。
妃奈はふにゃり、と顔を緩めて幸村の腰に腕をまわした。
すり寄せてくる妃奈の頭をやさしく撫でて、仁王を見る。



「俺と妃奈ちゃんの関係が許せないの?」

「え、いや、幸村…そうじゃなくての…」

「はっきり言えよ、ヘタレ」




氷の笑みで幸村が言い放てば、ガックリと肩を落として「なんでもありません」としか言いようがない。

テニス部の部長である幸村と仁王妃奈は恋人同士らしく、立海でもバカップルと影から呼ばれている程のものだ。
この関係を許せないのが、幸村ファンの一部と、仁王。


仁王は幾度なく阻止しようとしたものの、幸村の黒魔術に妹の暴言にくじけている。




「で、返してくれない?ソ・レ」

「………」

「はあ…妃奈ちゃん。今度指輪でも買いに行こうか」

「「えええええ!?」」

「あ、もちろん左手の薬指ね」



左手を掬いあげて薬指にキスをする。

真っ赤になった妃奈はどもった言葉で幸村の名前を呼んだ。
仁王はというと…



「に、兄ちゃんは認めんからなぁああ!!」



一人、叫んでいた。
うっすらと涙を浮かべ、ダブルスのパートナーである柳生の名前を呼びながら走り去っていったのを、幸村は満面の笑みで見ていた。





私のお兄ちゃんはヘタレ

(あーたのしい)
(ホントにいい性格してるよね、精市)
(クスクス、だって面白いじゃん?今度は何で遊ぼうかなー)


END...
100305
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30万だありがとうございます。の企画。
仁王がヘタレだと、面白がるのはきっと幸村(笑)


あきゅろす。
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