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そして君はサヨナラと言った
キミノナミダ @


リボーンが帰ってくるのは意外と遅かった。
夕飯に間に合うことなく、仕方なしにママンはリボーンの分をラップに分けてくれて取っておいてくれていた。
綱吉も意識がもどることなく眠り続けている。


『おかえり、リボーン』

『ああ。』

『遅かったわね』

『ちょっと色々行ってたからな。ツナはどうだ』

『まだ意識が戻らないの』


そうか。
そう返事し、躊躇いながらも床に複数の何かを置いた。
ビアンキは首をかしげて見ると、全て写真であることが分かった。その中の1枚を手に取り見てみると信じられないものがそこに映っていた。
あまりのものに絶句し、他の写真も手に取ってみる。


『これ…』

『“笹川京子に暴力を振るっているツナ”の写真だ』

『隼人も話していたけど…本当、に?』

『ああ、信じられねえだろ。あいつ等はツナが暴力なんて絶対にしない。と信じていたが、これで……』

『京子ちゃんはウソつくような子じゃあないわ』

『口じゃあ混乱する。どっちを信じればいいのか・な。でも、これを見せられたらツナは否定できない。俺も少し混乱せざるを得なかった』


リボーンは写真の1枚を手に取り、ため息をついた。
写真は夜というのもあり、暗くて細部まで映っていないが、ススキ色の髪、ふんわりとした髪型、手につけているグローブ。すべてがツナそのものだった。


『だがな、府に落ちない点がある。日付だ。』

『日付…?』

『たとえばこの写真、夜の7時14分。この日のこの時間、何をやっていたか、覚えているか?』

『その日は確か………!!!』

『気づいたか。ツナはこの日この時間、間違いなく俺と居た。こんなことできるわけねえんだよ』

『でも確かにこれ、ツナよ?』


眉間にしわを寄せていうビアンキに、リボーンはくしゃりと写真を握りつぶす。
帽子の唾で表情は読めないがにじみ出ている殺気にビアンキは少なからず冷や汗をかいた。





『……ん、』

『!…ツナ、気がついたか?』

『リボーン…俺……』

『玄関で倒れたんだ。…なあ、ツナ。』

『なに?リボーン』

『9代目に話して、奴らを守護者から外そう。これじゃあお前が』
『ダ、ダメだよ!!』


必死の形相でリボーンの言葉を遮って声を荒げた。


『い、今は信じてくれなくても、きっとわかってくれるよ。誰だって誤解はあるし…だから……。
それに俺の仲間だし、えっと…守護者、だし。ボスである俺がちゃんとしてなくちゃ。』

『ボンゴレ10代目に相応しい器になってきたな』


やれやれといった表情でリボーンが言うと、9代目に伝えておくと続けて言った。
ほっとした綱吉は『ありがとう』と呟き、こんな状況でも自分を支えてくれる2人に感謝し、再び眠りについた。




気持ち疲れしていたせいか、学校は2日休みんである程度回復してから学校へ向かった。
とはいうものの、完全に回復した訳ではないためにまだ足はふらつく。
リボーンからは無理をするなと念を押されたが、このまま逃げるわけにもいかなかった。

下駄箱に靴を入れようと開けた瞬間、血なまぐさい匂いと上履きの中で血まみれになって死んでいるネズミらしきものがいた。

内臓が出ていて無残すぎる、と称すには軽い。綱吉は悲痛の声を上げて腰をぬかし、こみ上げてくる気持ち悪さに口を抑えて嘔吐をこらえた。
身体が震えあがり、あまりの恐怖から涙が出てくる。


『沢田ぁ!!!』

『ぉ、にい、さん…?』

『極限に許さん!京子を監禁して暴力!昨夜病院に運ばれたそうじゃないか!よくものこのこと来れたな!!』


いつもの雰囲気ではない。
怒りに満ちており、了平の拳が綱吉の腹部にはいった。
下駄箱外に吹っ飛んだ綱吉は痛みに蹲り、口から血を吐いた。


『金輪際、京子に近づくなぁ!』

『は…っ、はぁ、京子、ちゃ……っ、ゴホ、ガハッ』


腹部に感じる痛みよりも病院に運ばれた京子を心配した。
なんとかして起き上がり、ぼんやりとした視界で地面を見る。転々と落ちる自分の血を見て泣きたくなってしまう。


頑張る。そうこの前決心したばかりだというのに、もう揺らいでいる。
遠くでチャイムが鳴っているのが聞こえてくる。


もうこれじゃあ教室にも行けない。


そう思った綱吉はフラフラと立ち上がり、誰にも見つからないようにそっと屋上へ向かった。
ここ数日、雲雀はボンゴレ関係で並盛にいない。楽々と行けた屋上。

ドアの先は開放感溢れており、苦しい自分に涙がこぼれる。
柵に手を添えて遠くを見つめてぼそりと口にした。


『信じて』


呼吸するだけで苦しいお腹を押さえて蹲る。


『俺を、信じて…』






『ツナヨシ』

『!!』

『ナクナ!ナクナ!』


綱吉の腕に止まり、繰り返し言うヒバード。
留守番しているのかな、なんて思いながら目を細める。
君は信じてくれるのかい?そう言おうとして、口を閉ざした。


『ツナヨシ!ツナヨシ!ナクナ!ナクナ!』

『ん、…うん。』

『ミドリーターナービークー』


パタパタと羽ばたき、綱吉の頭の上で歌い出すヒバードは慰めているように聞こえた。








しばらくして屋上に来た一人の人物。
並盛の風紀を取り仕切っている、雲雀恭弥だ。仕事を終えて学校に戻ったらしい。

辺りを見回し、誰もいないことにため息を零した。



『ヒバリ!ヒバリ!』

『全く、僕がいない数日の間に風紀を乱すなんて、信じられない』

『キエタ、キエタ、バイバイ、バイバイ』

『………戻るよ』

『ミドリーターナービークー』


そしてその日から、綱吉の消息はつかめなくなった。

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