そして君はサヨナラと言った
動き出した運命
「話しは終わったんか?」
「仁王雅治!!」
綱吉の部屋を出てすぐ、気配を殺して壁に寄りかかっている仁王が腕を組んで待っていた。
あからさまな反応を取るティアに溜息を零して一歩前にでる。
「……、ティアは先に車に行ってて」
淡々と言う朔弥。何か言いたそうな顔で朔弥を見るが、反論は許すことはなく、ティアはそれに従い、赤也とともにその場を離れた。
綱吉の部屋の前では話しにくい内容なのか。仁王はポケットに手を入れたまま歩きだした。
着いた場所は屋敷の中庭。
花の手入れもされており、設置されている長椅子に腰を下ろす仁王と花の前で屈む朔弥はただ無言だ。
時折入り込んでくるやわらかな風に髪を撫でられる。
そんな中、最初に声を発したのは、仁王だった。
「なあ」
「……何」
「綱吉、なんて言うとった?」
「パーティには行く。そう言った」
「……そか」
「変装、するんでしょ」
「ククッ、まあな。」
「綱吉、どうなの?」
「…あれから何の変わりもなか。綱吉もそうじゃけど、朔弥もあまり詰め込まんようにな」
後ろからそっと抱き締め、包みこむ。
それを抵抗することなく朔弥は目を閉じて頷いた。
数秒、何分、このままでいただろうか。
仁王は朔弥を自由にして手を握ると地下の駐車場まで送った。
車にエンジンがかかっており、朔弥が来たらもう出るのだろう。
「じゃあ、今度はパーティでな」
「ん」
「あまり話せんかもしれんけど」
「しっかり綱吉守んなよ」
「ピヨッ」
朔弥は車に乗り込み、ドアを閉めると直ぐに車は発進した。
いくつもの出口が潜んでおり、屋敷の指示で出る場所が決まる。
後部座席でならんで座っている2人はお互い窓の外を見ながら口を開いた。
「……ティア。」
「…なんです?」
「あいつ等に、パーティー参加するように伝えておいて」
「あいつ等…って。え、招待状はどうするんです?」
「私が準備する。それに、私たちは別件で行くから綱吉とは一緒にいられない」
「それもそうですけど…兄貴もいますし、ここのレジェンドもついているでしょう?」
「……私の部下も見張りにつける」
「それはそれは」
怖いですね。
苦笑してしまうアルベティアに、一切表情を変えない朔弥。
歯車は回り始めた。
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