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そして君はサヨナラと言った
錆びた歯車B



じゃあ、これでいいかい?
そういう幸村に綱吉は深く頷いた。
高級車とも呼べる、黒光りした車が連なって屋敷の前に止まっていく。
先に歩いて会場内に入って行ってしまう幸村と守護者たち。
この位置からでも耳に届く歓声。


女性らしい歩き方を小春に教わり、マナーを柳生に教わった。
デザインはユウジのセンス。
髪は仁王。
爪の手入れは白石。
メイクは財前。
それぞれの特技を生かしたのが、綱吉の今の姿だ。
意を決して車から両足を下ろした綱吉は、ゆっくりと前を見据える。


「お手を…」


長めの前髪を右だけ耳にかけ、眼鏡をかけている男は変装した骸。
スクアーロと同じくらいの後ろの髪はゆるりと肩で結わえられている。
房がないとこんなにも違うのだ。


「ありがとう、クロード」


手を重ねて立ち上がる、綱吉。
周りの目がちらちらと向かれ、気になって仕方がない。
目を伏せ、あいさつをすると骸の腕に手を置いて歩き出していた。
何人かの男が唖然と見ていたものか。

ふと、綱吉が足を止めて振り返る。
一人いない。


「ねえ、クロード…恭は?」
「あの人は人ごみを嫌いますから…もう中に入っているかもしれませんよ。」
「そう…」
「さあ、行きましょう。彼らも待っていますよ。」


寂しそうに頷いて、赤い絨毯の上を一歩一歩歩いていく。
その先には、大きな会場の入り口があり、名簿で確認を取っている体格のいい男が数名。
骸が話をしている間、綱吉はドアの先に広がるまばゆい世界に目を向けた。
眩しいともいえる、会場にはすでに大勢の人が集まっている。


「行きましょう」
「!…うん」


入場許可が得られたのか、自分たちもその会場へと足を踏み入れた。
豪華ともいえるような高い天井、そこから吊るされているシャンデリア。
さすが、ボンゴレ。と、誰かが言っていた。
綱吉は高い天井を眺めながら、足をすすめるが、隣に立つ骸がクスクスと笑いながら転びますよ。と忠告。
小さく謝って前を見据えたら、会場はガラス張りのドアから外に出られるらしく、ちらほら人がみえた。


「あそこに、居るのかしら…」
「え?ああ…恭のことですか?」
「うん…」


よくボンゴレのパーティでここを使ったが、定番と言えるほど、雲雀は庭にいた。
手入れをされているバラ園。
よく綱吉もそこに居たものだ。
9代目が奥方に送った白い薔薇のアーチは綱吉も気にっていたらしい。


「そうですね…居るかもしれませんよ」


彼もよく、花を見ていたっけ。
なんて思いながら綱吉に、行ってみますか?と聞いてみる。
返事はないものの、視線は薔薇園へ向いていて。ゆっくりと足を踏み出して、バラ園へと向かった。


そこにいたのは、変装した雲雀。
髪の色は黒以外は認めないと本人の意思により黒。灰色の瞳。
色はあまり変わらないが、印象がまるで違う。
既に誰かと話しているようだが、雲雀の背中を確認して、ほっとしたようだ。

声をかけようとして、止まる
隣に立っている骸は首を傾げて顔を覗き込めば、そこには冷たい目をした綱吉がそこにいて。
するりと骸から手を離すとしっかりとした足取りで一人前に進んでいった。


「ここに居たの、恭。」
「!ああ、やっと来た。待ちくたびれたよ」
「……」

話していた相手の元から去り、綱吉の前で跪いて手を掬い上げるとキスをした。
顔を見合わせたところで、綱吉は視線を前に向ける。
そこには、見知らぬ顔があった。


「…恭、知り合い?」
「まあね…クロードも、よく知っているさ」
「へえー、可愛いね♪やっぱり来た甲斐があったよ」


真っ白の髪、目の下にある、まつ毛のような変な紋様。
どこかで見た気がする。


「会うのは2度目だね♪」
「…えっと…」

「ふふ、つれないなあー
変装しても可愛いんだね?綱吉君」


ぼそり、耳元でささやく白蘭はにこりと笑みを崩さずに答えた。
目を丸くして隣に居る雲雀の服をつかんでしまう。


「ちょっと、怯えさせないでくれる?」
「2人も上手だねー♪んね、名前は?」
「僕はクロードです」
「僕は恭だよ。この子はエレン・スカーレット嬢…」
「貴方もよく知るレジェンドのボス…幸村君のフィアンセですよ」


設定上は。
という風に紹介し、人目もあることから白蘭は胸に手を添えて挨拶を交わした。
幸村は今、同盟組んでいるファミリーにあいさつしに行っている真っ最中だ。
終わり次第、ここに来るはずだと、骸は会場を背に言い放った。


「以前、彼には色々世話になったのですよ。」
「いろんな意味を含めて…ね。」
「ひどいなあ恭チャン」
「…咬み殺されたいの」
「恭、その口癖はやめなさい。知られてはこれからが大変ですよ」
「ふん」


興味なさそうにあたりに視線を散らばせる綱吉。奥に咲く薔薇の花に目が留まって
2人のそばから離れてバラ園の中に足を進めていくと、自分の名を呼ぶ声がした。
それでも振り向くことすらせず、ただただ歩き続ける。

色とりどりの花は手入れが行き届いているのがわかる。
もっとも奥に咲いている花、青みがかった花弁は魅力的だった。



「その花に触るな」





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あきゅろす。
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