そして君はサヨナラと言った 錆びた歯車@ 巡る巡る 運命は、回り続けて 狂った歯車は直すことを忘れたまま回りだす 気付いた時にはもう遅い 傷ついた歯車はやがて止まり――… 「綱吉君」 薄暗くなってきた部屋に明かりをつけて入ってくる六道骸。 その後ろには雲雀恭弥。 幸村の指示で、どうやら今まで外で探りを入れていたらしい。 綱吉のもとで動く2人にとって、別の人物からの指示を受け入れることはなかった。 一転したのは、綱吉が望んだことだから。とのこと。 ベッドの上で大きめの本を広げている綱吉は顔をあげて2人を見る。 「おかえりなさい」 「何を見ていたの」 「精市君たちの、アルバム。」 中学校のアルバムらしい 彼らにとって表でいられた場に違いなかった。 高校の卒業写真などはもうない。 そのかわりに、ファミリーで撮っている写真は多く残されており、写真の中の彼らは、よく笑っていた。 それこそ、綱吉だってよく笑う。笑っていた時代だってあったのだ。 「今度、僕のアルバムをもってこようか。バカな沢田綱吉と愉快な仲間たち。キミもバカだと笑うかもしれないよ、綱吉」 「うん…雲雀さんの同じ中学の綱吉君、見てみたい…かも」 「そ。じゃあ今度持ってくるよ」 ついこの前の、混乱していた綱吉の姿はなく、今まで通りの彼が戻ってきた。 忘れたのではないらしい。綱吉も覚えている。 ただ「もう、迷惑かけたくない」と言って自分の中に押し殺しただけ。 今の綱吉と、過去の沢田綱吉、別と考えて接することとなった。 実際、この数日間一緒にいるが、全く笑わない。笑う仕草さえない。 いや、比較するのはやめようとしたのに、くせが出てしまう。 「2人とも、傘ささなかったの?」 「「面倒」」 「……風邪ひいちゃうよ」 すとん、足を下ろしておくから大きめのタオルを2つ持ってきて2人に渡す。 風邪なんてひかない。脆くないから…。そんなことも言えず、素直に受け取ると頭を拭いていく2人。 綱吉はその様子を少しだけ見てからベッドに戻った。 「綱吉の写真は?」 「…精市君と一緒に撮った写真あるよ…」 「見せてくれるかい」 こくん、ひとつ頷いて1ページ1ページ開いていくと、綱吉をセンターに全員で撮ったものがあった。 ビクついて目を丸くしているが、綱吉にしては好きな部類の写真らしい。 ひとりひとりの顔を確認するように見て、最後まで来るとアルバムを閉じた。 「綱吉。今度晴れた日に街に出てみないかい」 「街……どうして?」 「今日、良さそうな喫茶店を見つけましてね。恭弥君と今度3人で来ましょうって話をしていたんですよ」 喫茶店でおいしいものを食べる。 ナミモリーヌのような女の子の集まる場所ではない。 大人の雰囲気を纏った品のある喫茶店だ。 アルバムを持つ手にわずかな力がこもる。 「うん。就任式、終わったら…」 「行く気かい」 「貴方が行く必要はないでしょう、赤の他人の就任式など…」 「確かに、知らない人…だけど…」 「………行くのやめますか?」 「ううん、行くよ。ケジメ、だからね」 精市君に本を返してくる。 そういって立ち上がり、部屋をそそくさと出て行った。 のこされた2人は顔を合わせてため息を零した。 「改めてこう考えると…穏やかになったな…」 「同感です。同じ空気を吸っているだけで吐き気がしたものですよね…」 就任式を明日に控えた今日、この2人が向かっていたのは任務。 その後に一緒に買い物だ。 もちろん、骸の霧による変装も忘れずに。 「ひとまず、彼の言うように集めましたが…」 「綱吉が望むわけ?あれで。」 「………」 「骸?」 「……、なんだか、嫌な予感しかしませんね。」 以前のパーティでは変装を仁王がしていたという。 あれだけ完璧ならばバレる心配もないはずだ。 しかし、変な胸騒ぎがしてならない。 変装を心配しているわけではないのだが、何かが起こりそうで不安が募る。 「綱吉が女装するからじゃないの」 「いえ…前回それは見ましたし…それに関しましては心配もしていません。」 「じゃあなんなのさ」 「それが分からないから…困っているんですよ」 NEXT... 111218 |