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そして君はサヨナラと言った
支えられた大空



迷うことなく屋敷を歩くヴァリアーの2人。
向かう先はもちろん、綱吉の部屋だ。
朔弥の後ろには、アルベティアが文句を並べながらついて歩く。


「ちょ、聞いているんですか!?」
「……うるさい」


「ねえ朔弥」

「……」

「綱吉は、」
「ティアーーーー!!!」



幸村が何かを言おうとしたが追いかけてくる赤也の声に遮られてしまい、口を閉ざした。
苦笑して赤也の方を見るとなぜか幸せそうな顔をしている。
ティアは後ろを振り向き、赤也に頬笑みかけた


「赤也、どうかしましたか?」

「え!?あー…んー……俺もツナの所に行こうかなーって」

「じゃあ一緒に行きましょうか」


ふんわりと笑みを浮かべるティアに顔を赤くして頷いた。
朔弥はそれを横目で見てから瞼を下ろし、幸村の横を通り過ぎて綱吉の部屋へと足を進めていく。

一足遅れてティアと赤也がついてくるのを確認してから。



部屋の前で一度ノックをし、返事が聞こえてから中へと入って行った。

ベッドに腰を下ろしている綱吉は、かすかに目を細めて「ひさしぶり」と声をかける。
表情はあまり変わらないが、彼にとってコレが精いっぱいなのだろうとわかる。

朔弥は近くの机にトンファーとワイヤーを置き、丸腰で近づくと隣に腰をおろした。
もちろん、少し間を開けている。これ以上近づけば怯えてしまうし、綱吉自身、少しずつ近づいてくれるからそれでいい。

椅子に腰かけている赤也と床に座布団をしき、ぺたんと座るティア。


「久しぶりですね、綱吉」
「顔色、悪い」

「ひさしぶり。…顔色、悪いかな」

「この前よりはまし。」
「そうですね、まだ少し顔色は悪そうです」


昔と比べたら本当に顔色が悪い。
健康的な肌は見る影もなく、色白くて細い腕がそこにある。

2人は心配に見るが、綱吉は首を傾げるだけだ。



「2人が来てくれたのって、イタリアのこと?」

「ついで。綱吉に会いにきた」

「そうそう!綱吉にあいに行くって言ったらじゃあパーリーのことも伝えて来いって言われたんですよ」



癖のある日本語を話すティアは未だ日本語を完璧にマスターしたわけではない。
なので、よく綱吉に鋭い突っ込みを入れてもらっていたのだが、今はその面影すらない。


「2人も、そのパーティに行く、の?」

「まあね。」
「ちょっとこっちにいられないけど、別の形で参加しますよ」

「2人が行くなら、俺、行く」


目を強く閉じてそれを言い放った。
この場にいた3人はひどく驚いてしまい言葉が出ない。


「迷ってたけど…行く、よ」

「綱吉。それは嬉しいけど、私たちは一緒にいられない。それでもいいの?」



膝の上に置かれている綱吉の手は震えていて、力を入れて握りしめると小さく頷いた。
朔弥達は眉をしかめ、そっとその手の上に手を重ねて綱吉を見る。
一瞬ビクリと反応したものの、目を合わせると安心したような表情へと変わった。


「眼が赤い…」

「え、そう?」

「あ、ほんとだ…泣いたんですか?」


ひょこりと顔をのぞいてくるアルベティアに綱吉は首を振って否定した。
無理して笑っていることなど朔弥達にはわかっていたが、無理に追求することなく口を閉ざす。
一息入れて立ち上がり、朔弥は綱吉に向かって「帰る」と一言残して部屋を出て行った。

綱吉は「来てくれてありがとう。」と手を振って見送ってくれて、ドアが閉まるまで視線をそらすことはなかった。


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