そして君はサヨナラと言った
切に願う
もう二度と……
離れたくない。
甘いあなたは彼らを許してしまうんでしょう?
大丈夫。
そういって笑う顔が…浮かんでしまう。
「僕は嫌ですよ。…貴方が何を言おうが、綱吉君と離れるのはもう御免ですから」
「……ヒバリさんは?」
「キミの勝手にしなよ。僕も僕で動く」
「…、ヒバリさんはこれからやってほしいことがあるんです。なので、咬み殺すのは我慢してください。我慢なんていやかもしれませんけど、お願いします」
そういって綱吉君はあることを恭弥君に話をした。
初めは目を丸くしたものの、眉間に皺を寄せて。
「それでいいの?キミは。」
「はい。俺は、俺がすべきことをするだけですよ」
「ふぅん。」
「骸は……っ、ごめん、そろそろ限界みたい。」
これ以上ここにとどまれば、綱吉君の負担になる。
そう言い残してベッドに倒れこんだ。
「…で、どうするんです?今からボンゴレに戻りますか?」
「今日はもう遅いからここで寝るよ。」
「そうですか、わかりました」
あくびを一つして、恭弥君は綱吉君の部屋から出て行ってしまった。
さて、僕はどうしますかね。
このままにするのも一つの案ですね、また怯えられては僕も傷つきますし…。
隣の部屋にいれば大丈夫でしょう。
「それでは綱吉君、おやすみなさい」
絹のような髪をそっと撫でて電気を消し、僕は寝室を静かに去った。
――――――――――…
「ああぁああぁあぁぁぁあああああ……っ!!!!!!」
ベッドに入り、枕を背にあてて本を読んでいた時だった。狂ったような声が聞こえたのは…。
間違いもない、綱吉君の声…。
相次いで7ものが落ちているような重々しい音まで聞こえてくる。
僕は本を閉じてベッドから素早く下りると隣の部屋に駆け込んだ。
「綱吉君!!」
真っ暗な中、手探りで電気のスイッチを探してパチン、明かりをつける。
ベッドで寝ているはずの綱吉君の姿はなく、暴れたような跡が残っている。
まさか…侵入者?
そんなはずはない。
ここは安全なはずだ。
辺りを見回すと、カーテンやら花瓶やら、様々なものが床に転げ落ちている。
当の本人はどこにもみあたらない。
「綱吉君……?」
ゆっくりと足を踏み出した瞬間、横から突然押しかかってきてバランスを崩してしまい、僕は床に倒された。
敵襲かと思い、構えてしまいましたが…姿を見れば、ほっと一息ですね。
震える手で僕の背に腕をしっかりと回してますが…これと言って力が入ってない。
いや、入れているんでしょうけど…衰えてしまったのでしょうか。
「嫌だよ、いやだ……っ、こわいよ…」
「もう大丈夫ですよ…どうしたんですか?」
「まっくら、いやだっ」
真っ暗?
ああ、電気消したのがだめだったのでしょうか。
いや、あれが原因の可能性もありますね。
悪循環となっているなら、電気は消さない方がよさそうだ…。
「ねえ、何事?」
「起こしてしまいましたか」
「いや、起きてたけど…なにどうしたの」
「暗いのが、苦手みたいです。震えてしまっている」
恭弥君は眉間に皺をよせ、ドアの縁に寄りかかって腕を組んだ。
綱吉君をじぃーっとみてため息を零すと、ゆっくりとこちらへ歩き出した。
ただ無言で頭を撫でて、そのまま立ち去る。
不思議な男だ。
震えている綱吉君の背中を撫で、電気も付けたままベッドに運んでやるとそのまま綱吉君の上に布団をかけた。
今のあなたは脆い。
その辺にいる、普通の子供だ…。
僕の服をつかんだまま、ゆっくりと目を閉じて。
「ずっとここにいますよ。お休み、綱吉君」
僕は、こんな子のために、ここまでしている。
数年前は、乗っ取ってやろうと、決めていたのに。
「良い夢を――……」
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