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そして君はサヨナラと言った
招待状の先





数日後
各ファミリーの元に就任式の招待状が送られ。

ミルフィオーレ、マルティージョ、シモン、、ガンドール、キャバッローネ、そしてレジェンドとディアンテにも届いた。



 ― ミルフィオーレ ―



何もかもが白で統一した部屋の奥、一面がガラス張りでできている部屋は日差しもよく、照明などいらない程明るさを保っているそこは日光浴に最高の場所だ。
ガラスのテーブルには積み上げられている書類と食べかけのマシュマロの袋がひとつ、コーヒーも添えてあり、3人掛けのソファーにはソファーの色とほぼ同色の髪をしている男が横になっている。
数枚の書類を手に持ったまま、力なくソファーから落ちている様子から寝ているようだ。


「白蘭、失礼しますよ」


軽いノック音が聞こえた後、入ってくる小さな少女は部屋の色とは正反対の黒を身に纏い、首から下げているリボン付きのおしゃぶりがゆらゆら揺れている。
ひょこりと覗きこめば気持ちよさそうに眠っている男、白蘭に苦笑を浮かべると手に持っているフライパンをお玉を思いきりぶつけて騒音を鳴らした。

カンカンカンカン!!!


「うわ!うるさ!!煩いよお!!ユニチャンすとーーっぷ!!」


一気に目を覚ました白蘭は手にあった書類を落として両手で耳を塞いだ。
目を覚ましたとわかった瞬間ユニは音をやめて、すがすがしい笑顔で白蘭の顔を覗き見た。


「おはようございます、白蘭」

「お、はよー…ひどいなあ、そんな起こし方ないでショ」

「あら、ひどいなんて意外です。職務中に眠っている白蘭の方がひどいでしょう?」

「で、ナニソレ…」



耳から両手をゆっくりと話して視線はユニの手にあるフライパンへ注がれる。
此処は調理場でもないし、フライパンなんてわざわざ遠い調理場から持ってきたと言うのだろうか…

ユニはものすごく楽しそうにフライパンを掲げると小さく音をならす。


「キッチンから借りてきたんです。入江さんから漫画を借りまして…」

「それに書いてあったの?」

「はい!面白そうでしたので…」

「それ、なんでボクにやるのさ、γクンとかいるでしょ…」

「何を言っているのですか、白蘭。γにやったら可哀想でしょう…?」


眉を下げて白蘭に言えば、彼はがっくりとした表情を浮かべてしまった。
γは可哀想だと思うのに自分には可哀想と思わないのか・と。


「そんな事より白蘭。良いお知らせと、どうでもいいお知らせがあります」

「そんな事…?まあ、いいや。じゃあ…良いお知らせから聞こうかな♪」


ソファーから起き上がると大きな欠伸をかいて背伸びをする。
ユニは一息入れて話をしようとしたところ、ノック音が聞こえてドアへ視線を向けた。
白蘭が返事をすると、一礼して入ってくるレオナルド・リッピ。手には新しいコーヒーがお盆に乗っていた。


「お話中でしたか?し、失礼しました!」

「構わないよ、レオ君。ちょうどコーヒーが飲みたかったんだ。置いてって」

「は、了解しました。」


白蘭の前に置かれている冷めきったコーヒーをお盆に乗せてあたたかいコーヒーを置くと、ユニの手に視線が向いた。
思わず笑みを零して。


「白蘭様にやられたのですか?ユニ様。」

「はいっ、レオさんの言う反応通りでした。これも下げてもらっても…」

「かしこまりました。」


レオはユニからフライパンとお玉を受け取り、部屋を去って行った。



「レオ君も知ってたわけね…」

「食堂でばったり会いましたので…。」


にこやかに言うユニだが、ふと、表情を真剣なものへと変えて白蘭を向く。
そこには笑顔が浮かんでいたが、ピリピリとした雰囲気を醸しだしている。


「で?」

「良いお知らせは、ツナさんを見つけました」

「!!…へえ、生きてたんだ♪」

「貴方が寝ていたので、桔梗さんがわざわざ私に報告を」

「ふうん…。桔梗クン、いるなら出てきてよ」


チラリ、視線をユニから逸らす。
何か企んでいるかのような瞳に、ユニは瞼をおろした。
ろくなこと考えているんだろう、と。
しかし、ユニは一切止めようとも思わない。白蘭が、彼に危害を加えることはないと、心のどこかでわかっているからだ。


「ハッ、ここに。白蘭様」

「綱吉クン、どんな感じだった?」

「白蘭様とお会いしたころの彼の面影は一切なく、一般人と何の変りもない少年…というところでしょう。」

「ふうん、少年…ね。あってみたいなあ…今の綱吉クンに♪ねえ、ユニチャンもそう思わない?」

「……ツナさんの意思を考慮してですが…お会いしたいですね」

「決まり!じゃあ桔梗クン、手筈の方よろしくね。」











―キャバッローネ―


「ボス、ボンゴレから手紙が届いている」


薄暗い部屋でパソコンをいじっているキャバッローネ10代目ボス、ディーノは眼鏡を押し上げてロマーリオを見やる。
綱吉が消えてから、ひどくショックを受けてしまい、探し続けていたが結局消息をつかむことすら叶わなく。9代目の守護者を通じて耳に入ってきた、10代目就任式の話。
反対し、綱吉の帰りを待とうと説得したが、理解してもらえなかった。


「…くそっ」


ロマーリオから受け取った招待状には、十代目就任式と称されていた。
見間違いもしない、ボンゴレの烙印も押されている。


「行くのか、ボス」
「……ロマーリオ、俺な、夢を見たんだ」


眼鏡を外して椅子に凭れ掛かるディーノは両手で目を覆った。
じんわりと涙が込みあがってくるのを、見せないようにするためだろうか。


「ツナが、俺に手を振ってさみしそうに笑って……」
「……」
「さようなら、ディーノさん。って、言う夢だ。最近は、こればっかだ……」

「ボス、少し休んでくれ。寝てないのはこれのせいか」


ロマーリオはディーノの腕をつかんで椅子から立たせようとするが、根が生えたかのように動くことがない。
今のボンゴレのボスを見ても、笑っても心が晴れる日などない。

あれだけ可愛がっていた綱吉の消息は絶えてしまい、自分の生徒である雲雀恭弥はボンゴレから離れて単独行動が増えた。
あの六道骸とクローム髑髏はボンゴレを抜けたともいわれ、処分の決定待ち。



「就任式は、行くさ。同盟のファミリーだもんな」

「ボンゴレ……、沢田綱吉の捜索はさせているぜ」


この世界で死体のない死亡など、数えきれないほどある。
わざわざ敵の死体を残しておくほど、ここの世界は親切ではないのだ。

だから探していた。
部下も沢田綱吉を気に入っていて、消息不明と聞かされた瞬間の騒動は目を見開いたものだ。
しかし、ここまで消息がつかめないとすれば…死んだ、とも取れる。


「ツナ…生きててくれ…っ」
「ボス、いっちゃあなんだが…その、あれだ。これだけ見つからないんだ、もう、忘れた方がいい」


見つからない探し物…もしかしたら一生見つからないかもしれない、沢田綱吉を探している部下の身にもなって言う。
ひとつのファミリーを纏めているボスが、こんな調子が続いたら困ったもんだ。
眉を顰めながら睨むようにロマーリオを見るディーノは、殺気を少し漂わせて低い声が部屋に響き渡る。

「それは、どういう意味だ…ロマーリオ。俺に弟弟子の死を認めろと?」
「……何年経ってると思うんだ、数日の話じゃねえんだぜ」




「それでも俺は…待つと決めた」




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