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そして君はサヨナラと言った
綱吉の願い





「私が綱吉に優しいのは、懺悔、最大のエゴ」


久々に見た気がします、こんない弱音を吐く…朔弥は。
ぽんぽん、と背中を優しく撫でて抱きしめる。


「ラブラブなところ悪いけど…俺から言いたいこともあるんだ」


ふと、声がした。
僕でも朔弥でもない、綱吉の声が。
ベッドで寝ているはずだ・なんて思いながら視線を向ければ、ベッドから上半身だけ起こして片膝立てて頬杖ついて、クスリと笑みを浮かべてこちらを見ている綱吉君がいた。
朔弥はひどく驚いている顔をしましたが、心の整理がついたのかいつもの表情へと戻って僕から離れた。


「綱吉…」
「久しぶりだね、朔弥ちゃん。」


足をベッドからおろして、ゆったりとした仕草で朔弥の前まで来ると、優しく抱きしめた。
戸惑いながらも、朔弥は綱吉君にこたえようと手をまわして。


「ごめん、綱吉…」
「どうして謝るの?朔弥ちゃんはどうしても動けなかったんだろ?なら仕方ないよ。俺…綱吉の為に動いてくれた。あいつの見えないところで支えてくれたじゃないか。」
「……」
「感謝してるよ、俺も、綱吉も」


小さな綱吉君はまるで姉に甘えるような声で、朔弥の華奢な身体を抱きしめていた。



「そろそろ、俺も動きたい。動かなくてはいけない。」



ゆっくりと朔弥から離れて、綱吉君はにっこりと純粋な笑みを浮かべると僕に恭弥君を連れてくるように言われた。
貴方は知っていたのですね、綱吉君を通じていろんなことが、全てが。
僕は2つ返事で呼びに出た。


中庭の少し離れた場所で、ぼんやりと立っている恭弥君と彼の肩に止まっているヒバードを見つけて名を呼んだ。
未だに殺気を放ったまま。仕方のない方ですね。
恭弥君に綱吉君の部屋に来るように言えば、悩む様子は見せたが小さく頷いた。


「綱吉、目覚ましたわけ?」
「いえまさか。別の綱吉君です」
「?意味わかんないんだけど」

そう言えば、恭弥君はむすっとした顔で僕を睨んだ。
クフフ…そんな顔で睨んでも怖くありませんよ。なんて口したら朔弥に怒られますかね…
簡単に説明をした。
綱吉君を護るために居る、もう一人の綱吉君を。



「僕は思うんです、彼は綱吉君を死なせないために出てきたのではないかと。そしてこれから起こることの為にも」


キイ、ドアを開けて綱吉君を見る。
彼は意思の強い目をして僕たちを見据える。


「そうでしょう?綱吉君」
「いきなり言われてもわからないよ、骸。」

まずは自己紹介しようかな。
なんて呑気な事をいう綱吉君は朔弥を抱きしめながら自分の存在について話しだした。

「3人とも、疑問に思っていることだと思うんだけど…俺のこの性格はね?初代との契約なんだ」
「初代?初代ボンゴレの事ですか?」
「そう。通常、1つの身体には1つの精神しかない。その理由は多分だけど、重いんだと思うんだ。身体が2つの精神を持つほどの容量を持っていない。だから、2つ目の精神なんて存在しない」
「でも、綱吉君には存在している」
「そう。でも、長くいることはできないからね…迅速に行動して綱吉に返してあげないと行けないんだ…」

確かに、綱吉君は今の彼につぶされないことなんてありえない。
だから期間が、限界があるんでしょうね。

「この身体だって覚えてる…正直、俺でも震えあがるほどのものだ」
「じゃあ綱吉が受けたことは全部キミにも」
「そうだよ。俺が出ようが所詮“綱吉”なんだ。だから、綱吉が悲しければ俺も悲しい。痛いなら俺も痛い。男が怖いなら、俺も怖い…全て繋がっているんだよ」

綱吉だけが苦しいと思った?なんて苦しげに笑う綱吉君は痛々しかった。
朔弥の手を掴んで、笑いを止めると、冷たい目が僕たちに刺さった。


「俺はあいつらを許さない。許すつもりもない。だから、初代と話をして解決に乗り込むつもり。だから3人とも、協力してほしいし、綱吉の守護者になって欲しい」
「…キミのじゃないの?」

「いづれ消えてしまう俺にはいらない。弱くて優しい綱吉の盾になってあげて?」


その声は甘い綱吉君とひどくかぶさった。
まあ、綱吉君本人なんですけどね。



「あなたの為に守護者になったのです。構いませんよ」
「不本意だけど、僕も構わない。また綱吉と戦えるならね」

「ありがとう、2人とも」



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