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そして君はサヨナラと言った
告白A








「懺、悔……?」


骸は私の言葉が理解できなかったみたい。
予想もできなかったのかもしれない。

まっすぐな目で見つめれば、骸は私の肩を掴んで。
その手は微かに震えていて。



「嘘でしょう…あなたが綱吉君を裏切るなんて…!」

「裏切ってしまったの。」


そう、裏切った。
私は確かに事件が起こる2日前、ザンザスから言われていた。「沢田を護れ」たった一言の電話で。
正直ムカついた。何故、私が守らなくてはならない。彼には守護者もいればリボーンだっている。
だから、私は無視した。この先に、何かあることも知らずに。ちゃんとボスの言うことは聞いておくべきだった・と反省させられる前に。

いじめが勃発したのはそのあとすぐ。
兄さんと風紀委員をしているから、すぐに情報が入った。「沢田綱吉が転校生・溝端紫乃を苛めて学校全体の乱れが生じている」と草壁から。
綱吉はそんな小さな事をする奴ではない。兄さんもそれを信じることはなかった。


兄さんも小さなことに動く気はないみたいで、数日は泳がせた。
でも、一向に静まることはなく、広がるだけ。

だから私はザンザスの言葉通り、<護る>を実行せざるを得なかった。
教室を覗けば<シネ><謝れ><ゴミ以下>なんて書かれていて、綱吉の机とその周りだけ異様に汚い。
綱吉の机に手を伸ばした時に咄嗟に腕を掴まれた。


『手を離しなよ、山本』
『わざわざアレの物に触んねえ方がいいぜ?』


よく見ているその笑顔も、今日の山本の目は笑ってなかった。
彼の後ろに隠れるように立っている溝端紫乃は少し私に怯えているような表情。


『何しに来たんだよ』
『溝端さんを助けに来た・ってわけでもなさそうだな』
『ご、獄寺君!私は大丈夫、だから…だからツナ君の話も聞いてあげて!』
『でもな、俺はあの写真を見てからはもう、アレを信じるなんて出来ねえよ』


アレ、とは何?綱吉なわけ?信じられない…守護者が裏切るなんて…ね。
どうやら実行するしかない…か。
そう思って私は動いた。綱吉にも連絡を入れてあげたし、兄さんがボンゴレの仕事で今日から出てしまったから、ひどくなる可能性が高い。

でも、私の前に立ちはだかった彼女はそれを許さなかった。
私宛に届いた手紙は夜6時に応接室で。とだけ書かれていて。


約束の時間に彼女は来た。

『……何か用?不法侵入だよ』
『ひ、どい…。あの、雲雀さん…私ね、お話があって…』
『だからって不法侵入は排除するけど』
『…っ、助けて欲しいんです。私…沢田君に殺されかけて…っ』
『逆じゃないの?君は傷つけて楽しんでいるんでしょ?傍に居ても平然としていられるくらい』


私は応接室のドアノ前に立つ彼女に向けて鋭い視線を送った。
そして、今先程まで見ていた書類を彼女に向けてぶちまければ、数枚の紙が彼女の足元に散った。


『学校はごまかせても私をごまかせるなんて、思わないことだよ。』
『へえ…よく知ってるわね、どうやって溝端紫乃の情報を手に入れたの?』
『君に話す必要はないよ。』
『そうだね…ねえ雲雀さん、私、思ったの。私の邪魔をさせないために、何が一番効率がいいのか』


クスクス笑いながら私の前にあるものを見せた。
銀色に輝く指輪。それはこの世にひとつしかない、大切な人からの贈り物。


『これ、手に入れるの大変だったのよねー…』
『どうやって、それを…』
『私にできないことはないから。これを砕かれたくなかったら一切手を出さないでくれる?』
『…協力なんて求めないから…見て見ぬふりをしてほしいの』



彼女の目は本気だった。
だから、手を出すこともできなくて、綱吉が傷ついて行く様をみているしかできなくて。
無性に苛立った。


「しかし、それは…っ」
「骸、私は…あの事件を起こした元をつきとめた。追いこんだ。指輪も私の元に戻ってきた。でも…」


それは既に、遅かった。



綱吉は行方不明となってしまった。




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