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そして君はサヨナラと言った
確かな拒絶と檻




僕たちはいつだって、沢田綱吉を中心に動いていたはずだったんだ。

なのに、なんなのこれ…。


墓は作るし、綱吉の代わりまで出てきてボスなんて言いだす。
赤ん坊も赤ん坊だよ、僕は認めない。

こんな草食動物の下に居て何が楽しいのかわからないよ。



「恭弥君」

「……なんだい」

「何も聞かないんですか?僕が綱吉を連れ出して…」

「それを僕に聞くわけ?僕が言えば君は変わるの?違うでしょ、君は君なりに動いているだけなら、何も言う必要性もないね」




骸が連れてきた綱吉はさっきから目を覚まさずに僕のベッドで眠っている。
起きる気配なんて全然ない。

こんなに間近で見るのは何年ぶりなんだろうね…しかも君、全然成長していないじゃないか。
僕たちは高校の時よりも成長しているし、顔立ちもまあ、大人になっている。

それなのに君は、まるで時が止まったかのように全然変わっていない。
あの日から…ね。

まあ、前髪は伸びていて、うっとおしいなんて思う。
あとは…肌が白い。

元々君は白い方だけど、まるで血が通っていないみたい…人形のようだ。




「何か、作ってきますね。お腹空いているでしょう?」

「……綱吉が、食べやすいものにしてよね」

「クフフ、わかりました」



部屋から去っていく骸を横目で見て、思う。

穏便になったな、と。
これも、綱吉が居なくなってからの変化かな。


群れを嫌う僕が極秘で建てた家。
風紀財団の一部と、骸しか知らないこの場所は綱吉をつれるにはちょうど良かったかもしれない。

あんな場所に戻れば、綱吉を見つけたという騒ぎで大変な群れをなすにきまっている。
それに、骸はボンゴレの人間ではなくなっているしね。


僕も、そろそろ決めようか。

ボンゴレに居るのも飽きてしまった。
昔はよかった、と思う。
その当時はやっぱり嫌だったし、草食動物の群れで過ごすのも嫌気がさしていた。

でも、今はあの頃がよかったと思える。
綱吉が居てこそ、僕はあの心地よさがあったんじゃないか、と。

ぬるま湯に居ながらも、時折来る衝動に綱吉は目をつぶってくれていた。
骸とやりあっても、すぐに止めに入らずにある程度の事はやらせてくれていたのに。




(今はまるで、檻の中にいる気分だよ…)




あの女が何しているわけではないかもしれない。

でも…面白くないな。



未だ目を覚まさない綱吉に視線を向ける。

やはり、綱吉はいい。


頬を、そして髪を撫でてやる。
綱吉は誰にもあげない。これは僕のものだ。


「ん…」

「起きたかい?」


うっすらと目を開ける綱吉は数秒ほど僕をじいっと見て、次第に目を大きく見開いた。
その目は、恐怖におびえる草食動物の目。


「綱吉」


此処は安全だ。
そう言おうと手を伸ばした瞬間だった。


パシッ
「い、いやあああああああああああああ!!!!!!」


僕の手を払って声をあげて。ベッドの上でジタバタを暴れ出した。
煩いし落ち着かないしかみ殺したい。けど…いつもの綱吉とは違う。それを頭に叩き入れて綱吉の手首を掴んだ。

ぼろぼろと涙を流しながら微弱な力で僕から逃れようとする。



「落ち着きなよ、綱吉」

「いやだ…っいやああああああ!!放して、はなしてえ!」



混乱している?何故?

僕が抑えているから?

違う。綱吉は僕を見ていないね。



するり、綱吉の手が僕から逃れていくとベッドから落ちて逃げていく。

まあ、部屋から出られないし焦らないけど。


一息入れてから綱吉の逃げた方へ視線を向けると、部屋の片隅でビクビクと震えながら頭を抱えている。
なんなの、この弱い生き物。




「恭弥君?なんですか、先程の声は」

「綱吉だよ」

「!…おはようございます、綱吉君。」



湯気の立っている器を片手で持ちながら綱吉に近づく。



「お腹空いていませんか?作ってきたんです、よろしければ…」

「こ、来ないで!!た、すけて…精市、くん」

「……」

「はあ…少し食べないと倒れてしまいますよ?」

「たすけて…たすけて……」



ぶつぶつとそればかり繰り返す綱吉に僕たちは声をかけるしかできなかった。

綱吉が脆くなってしまったのは調査で分かっている。
だからこそ、かみ殺せない。かみ殺してもつまらない。

蹲っている綱吉に目を向けてため息を零した。
なんなんだ、このつまらない草食動物は。




「は、なんなのコレ」

「恭弥、くん?」

「こんなの、綱吉じゃない」




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