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そして君はサヨナラと言った
躍動





遠山君が顔をまっさおにして俺の部屋に入ってくるものだから、少し驚いてしまった。
隣に居た真田も遠山君の顔色を見て、ただ事ではないと踏んだんだろう。

いつもの怒声はない。



「つ、つな…つなが!」

「綱吉君が、どうかしたのかい?」

「雲雀に…!」



雲雀。
その言葉でまさかとは思った。



「真田。」

「ああ」

「遠山君。綱吉君はまだあそこかい?」

「おん」



急ぎ足で庭の方へ走っていくと、木々の間から綱吉君を抱えている雲雀さんが見えた。
しかも、その先には財前君が倒れているのが見えて目を丸くするしかない。

俺たちに気付いたのか、雲雀さんは綱吉君から視線を外して鋭い目つきで俺たちを見る。
大事そうに抱えているし、綱吉君に害を与えることはない、と思う。

木の陰で気付かなかったけど、もう一人、………!!



「!柳…」

「ああ、僕の邪魔をしたからかみ殺したよ。用件は済んだ。僕は行くよ」

「綱吉君を、どうするつもりだい」




君は綱吉君を此処に避難させる・と言ったのに。なんで彼を連れていく必要があるんだ?
それに、なんだ?この違和感…




「綱吉!…っ、何を、しとるんじゃ」

「仁王…」

「面倒なのが来たね」

「綱吉を返しんしゃい!」

「ねえ、いい加減待てないんだけど」




第3者の声が聞こえて、思考が停止した。

今の声は雲雀さん。そして、今聞こえたのも…



ガサガサと奥から出てきたもう一人の雲雀さん。
まさか…



「早くしてよね……綱吉、連れていく気?」

「………」

「ふーん…それより、いつまで僕の姿でいる気?気味が悪いよ



骸」



奥から出てきた雲雀さんが、さも嫌そうな顔で言えば、霧に包まれて姿を現した骸。
独特の笑い声、オッドアイが俺たちを見据える。



「それでは、僕たちはこれで失礼します。」

「まちんしゃい!」




仁王が武器を手にし、それを放ったが、霧となって消える2人の残像をすり抜け、虚しく地面に落ちた。

悔しがる仁王を横目で見て、俺の後ろで唖然としている遠山君に財前君を、仁王には柳を運ぶように指示してこの場を後にした。

中学の頃だったら体格も違うし運べなかったであろう遠山君も、今は財前君よりも…白石君よりも背が高い。
もちろん力だってあるし、財前君を軽々と抱きあげて走って行った。



「遠山君。第2医務室へ運んでね」



俺は金色君に携帯から連絡を入れて第2医務室へ向かうように指示をすると、仁王は複雑そうな顔で柳を前で抱きあげて歩き出した。
きっと、綱吉君の事が気になるんだろうね。



「…あ、丸井?すぐに第1医務室に来てくれ。柳が負傷した」




慌てた声が聞こえたと思ったら「すぐに行く」と返事が返ってきて、通話は切られた。

仁王の後を歩く俺は、ひとり綱吉君のことを考える。

綱吉君が彼らの元へ連れていかれるのは悔しいし、不安だ。



けど、

あの2人は綱吉君を大切に思っているはず。
害を加えることはまずないだろうね。



不安なのは、綱吉君だけ。



待っててね、綱吉君。



必ず迎えに行くよ



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