そして君はサヨナラと言った
ヴァリアーからの使者
ドアを閉めてそれによりかかった。
ドアの先から聞こえる、綱吉の泣いている声。
深すぎた傷を、どう癒してやればいいのだろうか…。
仁王は自分の手を見、力を入れて握りしめた。
眉間にしわを寄せていると突進してくる何かに、仁王は危うく転びそうになってしまった。
自分の反射神経の良さを誉めたくなったに違いない。
何かと思えば、抱きついてきているもじゃもじゃ。……赤也だ。
じゃれあいかと思いきや、その顔は真剣そのもの。
「仁王さん!」
「なんじゃ赤也、うるさいのう…何か話があるんじゃろ?こっち来んしゃい」
溜息を零しながら、仁王は綱吉の隣の、自分の部屋へ赤也を呼んだ。
白と青と、ごくシンプルな部屋に最低限のものしか見当たらないその部屋に大きなベッド。
赤也はそのベッドの上に身を投げ出して口を尖らせた。
「ツナもイタリアのパーティーに行くってホントっすか?」
「……まあ、その予定じゃな」
「ボンゴレも、出るんスよね…。」
「ああ。……って、なんで知っとるん?まだ公表されとらんぜよ?」
首を傾げる。
仁王も先ほど綱吉と初めて知ったこと。
ソレをなぜ赤也が知っているのか…。
「ああ、今ヴァリアー来てるんスよ。」
「……は?今?」
「はい。それで教えてもらったっす!」
素っ頓狂な声を上げる仁王にケラケラ笑う赤也。
ヴァリアーと言えば、ここに来るのは決まっているはず。綱吉のこともあるから、全員で来るのをいったん止めてもらっているのだ。
今は柳と真田、2人が話をしているらしい。
なんというタイミングだろうか…。
もし来ているとしたら、可能性は2人。
どちらが来ても大丈夫だが…と仁王は考えを巡らせている。
「俺も行くとするかのう…」
「じゃあ俺も!」
仁王が部屋を出ようとし、それに続いて赤也もベッドから降りて彼に続いた。
数十分前までいた幸村の、ボスの執務室に足を運ぶ。
ヴァリアーはボスであるザンザス、スクアーロ、ベル、ルッスーリア、マーモン、レヴィ、フランそして、2人の諜報員で構成されている。
その、2人の諜報員が来ているわけだが。
「2人とも来ているんか?」
「ッス」
「そか…」
仁王はノックをせずに執務室のドアを開けた。
こちらを見ている柳と真田。
真田は眉を顰めて仁王を見ている。またノックをしていないことに対してのものだ。
それすら気にかけず、ドアに背を向けたままの2人を見ると銀色の髪をした人と黒髪の人。
間違いなくヴァリアーの諜報員だろう。
「久しぶりですね、仁王雅治」
銀色の髪を靡かせて、ニンマリとした笑みを仁王に向けた。
紅茶のカップを手に持ったまま、立ち上がると目を鋭くして
「よくもこの前は騙しましたねぇええ!!!ボスに飽きられたじゃありませんかぁあああ!!!」
「うっさいのう…流石、兄の血じゃな」
「あんなボケなすと一緒にしないでください!!」
兄と同じ長さの髪を揺らして怒鳴る。
仁王達は両手で耳を塞ぎながら会話をつづけている。
声量は真田といい勝負ともいえよう。
「おーおー、兄を“ボケなす”なんていいよるか。あいつのことじゃき、悲しむぜよ?」
「悲しむ?そんなの見たら吐き気しますよ!!大体…」
「うるさい」
ずっと黙っていた黒髪の女性はため息交じりに冷たく言い放つ。
銀色の髪の女性は口を噤んで「すみません」と小さく謝った。
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