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そして君はサヨナラと言った
静かな足音@







仁王に指定された場所で、きっかり20分後に骸とクロームは姿を現した。
車のドアに背を預けて煙草を吸っている仁王はゆっくりと目を開けて2人を見やる。



「凪、久しぶりじゃな」

「こ、こんばんは」



あどけない挨拶に肩をくすめてから煙草を消して一息入れる。
辺りを見回して気配も感じない完璧な状態で2人を車に乗せた。
後部座席に乗った2人は運転手を見て目を丸くする。

変装しているとはいえ、仁王の変装とはまた違ったものだ。
眼鏡をはずし、髪を後ろで束ねているだけなのだが、雰囲気がまるで違う。



「久しぶりやなあ、お二人さん」

「忍足侑士…ずいぶんと長らく見ていないと思ったら、そちらに居たんですね」

「まあ、今日で一旦任務は終了やしな。」



肩をくすめては、髪をかきあげて髪止めを取った。
どこからか取りだした丸メガネをかけると、見覚えのある忍足の姿だ。

助手席に仁王が乗り込んだのを横目で確認すると車を出した。
一気に景色は変わっていく中、2人に今の状況を話しだす。

自分がボンゴレを抜けたこと。

綱吉なしのボンゴレに意味がないことも全て。




仁王は黙って聞いていた。
侑士はたまに相槌を打っていたが、仁王同様聞いていてくれて。

話が終わるころにはレジェンドの屋敷に到着していた。







初めてではないが、厳重な警備を通過して、案内されたひとつの部屋。
ネクタイを緩める侑士は変装を解いていつもの見なれた彼がそこに居る。

侑士も今まで任務に出ていたため綱吉の状況は聞いているだけのもの。
実際見るのは始めてだ。
仁王はノックをして、鍵のかかったドアが開くのを待った。中からは幸村の落ち着いた声が聞こえ、ゆっくりと開けられた扉には真剣な顔をしている柳。

彼のことだ、ドアの近くに立っていたのだろう。


「遅かったな」

「まあ、な。」


肩をくすめて、中に足を踏み出すとシン、とした空気がそこにあった。
ソファーに横たわって小春の治療を受けているユウジ。
窓辺に座り、本を読んでいる幸村。
その傍らで腕を組み、壁に寄りかかっている真田。

ベッドに横たわっている綱吉の治療をしている丸井と、近くで見守っている赤也と遠山。
財前は少し離れた場所で眉間にしわを寄せながら綱吉の方をじっと見ていて、隣には謙也が控えている。


「幸村、連れてきたぜよ」

「やっぱりね。来ると思っていたよ」


本を閉じて椅子から立ち上がる。
真田に本を渡すと仁王の後ろに居る骸、そしてクロームに挨拶を交わして中に入るよう促した。

侑士は従兄弟の謙也の処まで行くと腰をおろして一息ついている。


「様子はどうなんじゃ」

「丸井がやってくれているけどね…あまり良いとはいえない」

「………」


ベッドの傍まで行き、綺麗な目を閉ざしている綱吉の髪に触れ、心の中で「ただいま」とつぶやいた。
丸井の治療は手を握っているだけのもの。
綱吉から丸井へ視線を向ければ、疲労が顔に浮かんでいるのがわかる。



「ブンちゃん、もう休んだ方がええ」

「……ん」


仁王の言葉に丸井は綱吉から手を放してベッドに倒れこんだ。
重いため息を零して深呼吸を何度か繰り返している。




「本当に、生きて…っ」

「ボス…」



骸は探していた彼が本当に生きていた。

ベッドを覗きこんでみれば、会場で見たあの女性ではなく、最後にみた綱吉とそこまで変わりない。髪が伸びていて、雰囲気が少し違ったように感じられる。
メイクも落ちているであろう顔色も未だ白く儚い。

こんなにも、違う。
あの頃のような綱吉がいない。そう思うと自然に伸びてしまう手。
自分が探し求めていたうなよしがすぐそこで寝ているのだ。


後少しという処で、聞こえてきた



「触らないでくれるかい」




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