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そして君はサヨナラと言った
護るべき家族






綱吉を家族に迎えてから、随分と経った。
日数がすべてではないが、幸村も綱吉が家族の一員になってから、それが当り前のようになっていく。



仁王の隣、赤也の向かい側の空部屋に綱吉を迎えた。
他にも空き部屋なんてたくさんある。しかし、あえてその部屋を選んだのは寂しくないように…そして、彼を一番気にかけている赤也と仁王を傍に置くことだった。

部屋の前で立ち止まり、リズムよくノックする幸村だが、仲から返答がない。
溜息を零すことなく、しょうがない。そんな表情でドアノブに手をかけた。



「綱吉。入るよ?」



遠慮がちに開いた扉。真っ暗の部屋がそこにあるだけで、カーテンも閉め切って人工的な闇を作り上げている。

電気もつけずに、部屋の奥に設置されているベッドの隅で膝を抱えて丸くなっていた。


ぱちっと音を立てて電気をつける。しかし、何の反応もしない。
すこし震えているようにも見える綱吉に笑みを零した。


ゆっくりと近づいて、ベッドに腰を下ろす。
小さなスプリング音がやけに大きく聞こえた。ビクリと肩を跳ねる綱吉に触れることなく、手を差し伸べるだけ。
触れれば、反射的に拒絶してしまい、綱吉が自身を傷つけてしまうから…。



「風邪ひくよ?ベッドに上がって、ね?」

「………」

「綱吉が風邪ひいたら、仁王と赤也が46時中離れないよ?」



クスクス笑いながら言えば、うずめていた顔を上げて幸村を映した。

単に見ているだけのような表情。差しのべられている手に視線を移して自分の手をそこに重ねた。

幸村は綱吉の手を握って、ベッドの上に座るように促し、漸く動いた足をベッドの上にのせる。




「綱吉。君だけ此処に残ることもできる。でも、数日間帰って来れないし、不安なんだ…。できれば一緒にイタリアへ飛んでほしい」

「で、でも……っ」

「わかってる。ボンゴレでしょ?」

「……うん」




震えが、止まらないんだ…


消えそうな声で呟く綱吉に、幸村は眉尻を下げた。





「護る。」




「「!!」」

「俺に任せんしゃい」



突然聞こえた第3者の声に2人は驚き、ドアの方を向いた。

そこにはやさしい目で綱吉を見ている仁王の姿がそこにあって。
綱吉は無意識に仁王の名前を口ずさんだ。

仁王は綱吉の部屋に入り、綱吉の前でしゃがむと両手で頬を包む。




「あいつらに、手出しはさせん」

「マ、マサ…っ」

「ふふふ、仁王だけじゃないよ。俺も、ここの皆も…綱吉を護る」

「それでも行きたくないんじゃったら、強制はせんよ」

「ゆっくり考えていいから、ね?」




2人の優しさに、目から涙がこぼれおちた。
拭うこともせずにベッドを濡らしていく。


幸村は綱吉を抱きしめてあやした。
ビクリと跳ねがった身体と少し硬直している彼を責めることなく、ただただ、やさしく。




「我慢しなくていいんだよ。ここには、綱吉を傷つける奴は一人もいないんだから」

「……ぁ、…ふ……んん、ごめ…んね……」

「いいんだよ、甘えて」


堪えていた感情が、涙が、溢れてくる。

仁王は羨ましそうに綱吉を見て、むすっとすると踵を返して部屋を出て行ってしまった。
幸村は内心、仕方のないやつだ。なんて思いながら綱吉の背中を撫でながら。




「だって、家族だろ?俺達……」


微笑んだ。




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091218


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