そして君はサヨナラと言った
白い闇C.D〈番外編〉
握り締めている携帯に気付いて足を止めた。
荒い息をなんとか落ち着かせて画面に見入る。
そこには、柳生が綱吉の所に向かっている事と、あまり状況が良くないということ。
幸村と連絡をとる必要がある、と書かれていた。
安心感と不安感がいり重なる中、俺は幸村に電話した。
出るのが早い。
『白石かい?どうだ、そっちは』
「見つけた。せやけど…」
幸村は何も言わなくて、ただ黙って聞いとった。
そして、重たい声で納得の声を出すとレジェンドの屋敷に移動する事を言い出した。
『柳生には、忍足達と合流後、地下駐車場に向かうように指示してくれるかい?』
「了解。両方の晴の守護者を早急にあの子の元へ。ユウジが動いたんや、きっとユウジは動けへん。小春はユウジの回復にあてさせる。」
『後は2人を見てから、だね』
「では、後程」
『ああ』
携帯を閉じて、急いで会場へ足を向ける。
走りながら小春にユウジがSOSというテンプレートを送信し、自分も急ぐ。
ユウジの事だ。
テラスから出て、誰にも見られないところで行ったに違いない。
死角となる場所を中心的に探してみる。
一息入れて、足を止めたときに近づいてくる足音に、そちらへ向けた。
「!…柳生」
ぼそり、呟き彼に近づく。彼の腕の中で震えている綱吉を見つけて、触れる。
綱吉は柳生の首に細い腕を巻き付けている。
髪を少しだけどかして顔色を見、言葉が出なかった。
会場の明かりが少し届いているとはいえ、まだ暗い此処でも綱吉の顔色が悪いのがわかる。
「綱吉君、私が着いた時は既に…」
この状態やったってことか。
思ったより酷いなあ。
柳生の数メートル先にいる、ユウジが具現化したネズミ。
移動しながら、綱吉をこのままレジェンドの屋敷まで運ぶことを伝えて、謙也とユウジがいる場所へと急いだ。
「…あ、来ましたよ謙也さん」
財前までおる。
丁度ええ。直ぐに俺たちは移動をする事を伝え、詳しい事は車で話すこととなった。
財前が、綱吉を見た途端に顔が険しくなったことは言うまでもない。
ユウジの幻術も人形ごと消えて立ち上がる。
「急ぐで」
相当無理しているな。
しかし、ユウジは甘える事なく俺たちと歩きだした。
すれ違う人達には女装している綱吉を心配して声をかけるが、疲れただけだ、と言い離れていく。
駐車場はまだパーティー真っ最中の為に人は最低限の者しか居なかった。
車に着いた途端にユウジは前に傾いた。
すかさず、隣にいた財前がユウジの腕を引っ張り、膝をつくくらいでおさまった。
ネズミの大量具現化に道案内。倒れてもおかしくないだろう。
「謙也さん、手伝ってくれません?」
財前の隣にいた謙也は慌てて手伝い、車に乗せた。
数秒遅れて小春の声が響いてくる。
車内に転がっているユウジに悲鳴をあげながら、活性の力で治癒していく。
俺たちが車に乗り込んで数分経った後、千歳と金ちゃんが来て揃った。
ちなみに柳生と綱吉はレジェンドの車に乗っている。
流石と言うべきか、2、3分で集まったレジェンドは直ぐに駐車場を出て屋敷へと向かっていった。
ただ、約一名を除いて。
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