そして君はサヨナラと言った
白い闇B.D
必死に探しまわる銀髪の男。
声に出せない分、走るしかない彼…仁王は辺りを見回した。
夜というのもあって、あたりは暗く会場から離れれば明かりも届かなくなって見えない。
「くそ…っ」
このままでは埒があかない。
綱吉の名前を呼ぶことは彼の存在を明かしてしまうようなものだし、だからと言ってこのままにしておけない。
仁王はポケットから携帯を取り出して柳生に電話をかけた。
呼ぶ出し音すら苛立ちを募らせ、「早くしろ」とせかしてしまう始末。
コールも3回の内に彼は出てくれた。
[どうかしましたか?]
陽気な声が雑音として入ってくるが、一切無視して柳生の声だけを耳に留める。
「…スマン、見失ったぜよ…。」
[誰を………!まさか仁王君…!]
「ああ、想定外のことがあっての…とりあえず一緒に探して欲しいんじゃ」
[!…わかりました、大体の場所は?検討ついているんですか?]
「テラスから出たんじゃ、戻っていなければ恐らく…」
[…わかりました。今、白石君もいますし、今そちらに2人で探しに行きます]
「頼む」
携帯をポケットにしまい、再び走り出した仁王。
声に出せない声を精一杯上げて名前を呼んだ。
携帯を静かに閉じる柳生は強く握りしめた。
隣で首を傾げている白石に柳生は一息入れて目を合わせる。
「…仁王、なんやて?」
「あの人を見失ったそうです。」
あのひと。
それだけで、それが誰をさすのかがわかったらしい。
柳生と共に移動を始めてテラスへと向かった。
途中、一緒に探しに行けそうな人がいないか目で見てみたが、全員誰かに掴まっているのがわかる。
「ホンマか、それ…」
「はい。早急に探さないと…」
「せやな」
綱吉の今の状況を知っているからこそ、深刻げに眉を寄せてしまう白石。
人ごみを避け会場からテラスに出た。
案の定、真っ暗になってしまっている外に内心舌打ちしたくなった。声も出せないし、ここは自分の足で探すしかない。
2人は顔を合わせて闇の中へと走って行った。
綱吉を探してどれくらいが経過しただろうか。
縮こまっている人物を発見し、近寄ると彼以外に誰かがそばにいる。
誰だっただろうか。
どこかで見た気がするんだが…。
そう思いながら近づき、息を整える。
「探しましたよ…」
「あ!お迎え、来ましたよ?…レジェンドの柳生さん、でしたよね。」
「え、ええ…」
スクリと立ち上がり、丁寧にお辞儀してくる女性は先程ボンゴレ守護者の中心にいた、溝端であった。
蹲っている綱吉の背中をさすっていたらしい。
「名前を伺いしたかったのですが、“苦しい”しか言わなくて困っていたんです。幸村さんと一緒にいたのを見ましたので、レジェンドの方とは思っていましたが…」
「そうですか…ありがとうございます。」
「具合、悪そうなので…ゆっくり休ませてあげてください」
「ええ。」
では。
そう言うとその場を柳生に任せて溝端は去って行った。
介抱してくれていたのだろう、首にはストールが巻かれている。
とりあえず見つかった。白石に電話を入れ、電話が繋がらなかった仁王へはメールを入れておく。
柳生は小さな声で「失礼しますね」と言うと、横に抱きあげてゆっくりと歩き出した。
「柳生、君…っ」
「はい、ここにいますよ」
「…っ、怖い、痛い、苦しい、よ……」
「すぐに丸井君を呼びます、もう少しの辛抱ですよ」
「……うん」
ゆっくりと目を閉じて眠りにつく綱吉の目からは、一筋の涙がこぼれていた。
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