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そして君はサヨナラと言った
白い闇A




「探しましたよ、どこに行ってたんですか」


銀色の髪をなびかせ、指にはいくつもの指輪をはめている男がこの場に入ってきた。
獄寺隼人、かつての綱吉の仲間。右腕。守護者。

予想していなかった柳は内心焦りを見せた。
それでも表情ひとつ変えることなく仁王に目を向けると、自分の背に綱吉を隠しているのが見えホッと一息。



「獄寺か。ちょっとな、こいつらと話していただけだぞ」

「レジェンド…久しぶりだな。……リボーンさん、10代目が探してましたよ?」


素っ気なく挨拶には程遠い言葉を2人に言い、リボーンに伝えると、リボーンはため息をこぼして踵を返した。
10代目。獄寺の言葉に仁王は強く手を握り締めた。
違う、認めない、認めたくない、ボンゴレ10代目は綱吉だ。そう言いたそうに。
開かれた唇は何も言うことなく、閉ざされた。



「リボーン、どこに行っていたの?レジェンドのボスがご挨拶に来てくれていたのに…」

「すまねえな、溝端」

「恭弥も骸もいなくなっちゃうし、びっくりしたのよ?」

「あいつらはそんなもんだ。」

「そう。……レジェンドの仁王さんと柳さんですよね?はじめまして、ボンゴレ次期10代目の溝端紫乃です。よろしくお願いします」

「ああ、よろしくな」
「……」


人がたくさんいて、きっと綱吉にとって居心地良い場所ではないはずだ。仁王は溝端の挨拶など気にも留めずに考えこむ。
さっさとこの場から離れないと…。

ふと、会場の中からこちら側に歩いてくるボンゴレの守護者が目に入り、綱吉がこんなようでは、この場に多くの人を呼ぶのはよくない、と判断した。
彼らがくる前にテラスを出ようと考えるが、それは既に遅かった。


不意に感じた手の冷たさ。

握られていた手はそこになく、後ろを振り向いてみれば、後ろの庭に去ってしまったようだ。

しまった…!

そう思うのも遅く、クソ、と舌打ちすると綱吉が行ったであろう庭へ走って行った。






一方、その綱吉は仁王から離れて庭に来ていた。
人がたくさん来てしまったのもあるが、何故か気持ち悪さに吐き気が襲い、気付いたらその場から去っている始末。
胸をおさえながらも、俯きながら歩いている。

胸が苦しいのはきっと過呼吸のせいだ。
めまいもして来て、とうとうやばいんじゃないだろうか。
そう頭の隅で思ったが、休もうと思った時は既に限界だったんだろう。身体が前に傾いてしまった。


トサっ



誰かに支えられたようだ。
きっと仁王が気付いて来てくれたのかもしれない。
そう思うと安心できた。


「どうかしましたか?」


聞こえてくるのは敬語。でも柳生とはまた違った声色。
一瞬息が止まる感覚に追われながら目を見開く。

早まる鼓動を抑えながらゆっくりと顔を上げると、そこには不安そうな顔で綱吉を見てくるオッドアイの男。

右目には“六”という文字が見える。
ゆっくりと男から離れて立つ。変な汗が全身から流れ出る感じがする。

怖い。
足が、震える。

縋るものもなく、顔を青くする綱吉は動けずにいる。

「顔色悪いですよ?」


熱でもあるのでは?
そう手を伸ばされて、咄嗟に払ってしまった。
男はまさか手を払われるとは思ってもいなかったのだろう。それ以上に綱吉本人が驚いていた。
なぜ手を払ってしまったのか。


「あ、ごめんなさ…」


一歩。また一歩後退していく綱吉に男は目を丸くした。
警報が鳴り響く中、透き通るような…それでもしっかりとした声が聞こえた。

――逃げろ、走るんだ――
聞き間違えなんてしない。
指示を出したのは彼だ…もう一人の自分。
固まっている男を残してすぐにその場を走り去っていった。

あの男を見て何かが頭によぎった。
でも、頭痛が邪魔してそれを思い出すことが叶わないし、彼は『逃げろ、走るんだ』そういった。
涙目になりながら誰かを求め、随分と離れた庭で立ち尽くす。


「マサ…っ、精市君…!」



助けて。
カタカタ震えた手で、自身の身体を抱きしめた。





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