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そして君はサヨナラと言った
プロローグ





立派なドアを前にノックをすることなく入る仁王に続いて入る綱吉。
そこには、眉間にしわを寄せて考えている幸村と真田、柳がいた。

こうも3強が集まるということは、何やら面倒なことだということだ。




「3強が集まるとは…なんかありそうじゃな、面倒なことが」

「くす、その“面倒なこと”なんだけど…」



仁王の溜息に、幸村の呆れた表情。
仁王の隣に立っている綱吉は首をかしげているだけだ。

柳はデーターが書いてあるノートを片手で閉じ、幸村の隣から離れていった。
反対隣に立っている真田は綱吉を見ると一層眉間のしわが寄る。

それに気づいたのか、綱吉はビクリと身を縮こませて仁王の後ろに少し隠れてしまう。

ぎゅう、と仁王の服を掴んでいる綱吉。
それを横目で確認した仁王は真田への無言の威嚇と絶対零度の笑みを真田に向けている幸村にうろたえる真田。

お茶を入れて戻ってきた柳は場の雰囲気を一瞬で把握し、ため息を零してテーブルに茶をセットした。
その数は5。
この部屋にいる全員の分だ。



「綱吉。お茶入れたぞ」

「あ、うん…ありがとう」


「どういたしまして。…全員の分を入れた。そこで話そう」

「流石柳。気がきくね。どっかの誰かさんと違って」



ね、真田?

という言葉に慌てた真田に裏拳を顔に当ててから椅子から離れてソファーに腰を下ろす。
顔を押さえながらソファーに腰を下ろす真田は幸村の隣に腰をおろした。

仁王も、幸村達の向かい側のソファーに腰を下ろす。
躊躇いがちの綱吉も、仁王の誘導もあってやっと腰をおろした。

柳はもう一つ空いている幸村の隣に腰を落ち着かせると足を組んだ。




「飲んでいいよ」




紅茶を手に取り、優雅に飲んでいる幸村。
先ほどのピリピリとした空気はほんの少し和らいでくれたようだ。

綱吉の前には煎茶。
仁王の前にはコーヒー。
そして柳と真田の前には玉露が置かれている。

それぞれの好みに沿った飲み物だ。
カップのデザインもよく、高価なものに違いない。

綱吉はカップを口につけて熱さを加減してある温度であることを確認してから飲み物を喉に通した。

柳は様々なデーターから好み、温度などを調節している。
それが幸村だけではなく、全員に喜ばれていることなのだ。



ホッと一息入れたところで、真剣な顔立ちをする。
それに伴い、気を引き締める4人。



「綱吉。落ち着いて聞いてくれ。
今度、同盟ファミリーとイタリアでパーティーがあるんだけどね?それにボンゴレが出ることがわかった。」

「…………え?」

「俺達はボンゴレと同盟組んでるし、綱吉がここにいることはドン・ボンゴレも了承してる。だから、それは問題ないんだけどね…?」



幸村達のファミリー、レジェンドファミリーは9代目との同盟に了承しているし、実際、情報の提供したり戦闘能力的にも交友関係もいい。
ヴァリアーとも気が合うらしく、何度か話をしたこともある。

そこまででは問題ない。問題ないのだ、彼らだけならば。
しかし、現在は次期ボンゴレ候補まで参加する。それが幸村達の悩みの種。
それまで言わなくても、綱吉を含むそこにいるメンバーはわかっていた。

あえて口にしなかった幸村は口を閉ざしたまま綱吉を見ている。

綱吉は小刻みに震え、何度も小さな声で拒絶の言葉を口にした。
あまり表情を顔に出さない綱吉はそこから涙を流して両手で身体を包みこんでいる。

隣に座っている仁王は綱吉の頭を撫でて落ち着かせようとするが、それも意味をなさない。
声をかけたが反応もなく、どうしようかと頭をひねらせた。

柳も落ち着くように言葉をかけるが頭を振って拒絶して。
挙句の果てには両手で耳を塞ぎ、ソファーからいきなり立ちあがった。




「い、やだ…っ」




切れ切れに言う綱吉は執務室を飛び出てしまった。

開けっぱなしのドアから驚いている声が遠くから聞こえる。
仁王は綱吉が出て行った先を見たまま動こうとはしない。




「柳。ここを任せていいかい?」

「ああ。」



上着を羽織ったまま、幸村はソファーから立ち上がり綱吉の後を追って行った。




「綱吉はまだ…縛られとるんか……」

「それだけ傷は深いんだろう」

「しかし、後は精市に任せてもいいだろう。」



言葉と同時に仁王は立ち上がり、部屋を出て行った。
その眼は憎しみを孕んだ色をともしており、あまりの殺気に空気が凍りついていた。

真田は目を閉じ、腕を組んでいる。
柳はパラパラとノートを捲り、綱吉の情報について書き足していた。



「あれは、同属性ではないと無理だからな…」





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091120


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