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そして君はサヨナラと言った
ヴァリアー登場









「す、すごい……ここがイタリア?」


屋敷から外を眺める。
レジェンドが所有する屋敷でディアンテも当日まで休むことになった。

仁王は疲れたらしく、欠伸をかきながら部屋へと足を向けていってしまい、綱吉は初めてのイタリアに目を見開いた。
幸村が綱吉の隣で笑みを浮かべながら頷く。


「そうだよ。綱吉はイタリア初めて?」


幸村の質問に戸惑いながらも小さくうなづいた。


「どうしたの?」

「う、ううん、何でもない…」

「そう」


綱吉は今、敏感だったんだ。少しばかり悔しげに顔をゆがめてしまったのだろう。
表情に出さないはずだったのだが。自分のミスに舌打ちをしたくなる。


綱吉がイタリアに来るなんて初めてのわけがない。
ボンゴレの本拠地でもあるわけだし、綱吉も正式に受け継ぐために何度か行き来していた。


「(俺は綱吉に思い出してほしいのか、否か。自分でもわからないな…)」

「ねえ精市君。ヴァリアーって人達が会いに来るんだよね…?」

「そうだよ。」

「朔弥さん達は…?」

「2人は別件で動いてるって言っていたからね。多分ここに来れないんじゃないかな。」



残念そうに俯き、窓の外を見ていたら黒い車が数台入ってきた。
後ろにいる幸村の袖をひっぱり、窓の外に指をさす。
焦りを隠せない綱吉は車から降りてきた人にビクリと肩をはね、身を縮こませてしまう。降りてきた人の中でも目の鋭い、黒髪の男が屋敷に目を向けて目を細めた。
綱吉は目があったとつぶやいて幸村の後ろに隠れる。

幸村は綱吉の頭を撫でて窓から黒髪の男…ザンザスを見下ろした。
その目は綱吉に向けるような温かさはないが、冷たくもない。


「綱吉。あのひと達は綱吉に会いに来たんだよ?」

「……え、でもっ」



怖い。


そう続くような表情で、口を噤んだ。




「ぶっちょー♪じゃなかった、ボッスー♪」

「なんだい、バカヤ」

「ちょ!ひどいっすよ、間違えちゃっただけじゃないっすか!!」

「で、用件は?」

「(スルーされた!!!)えーっと、執務室だとあれなんで、第3ミーティングルームに通しますんで」

「そうだね。また屋敷を破壊されちゃあ困るし。それに第3なら壊されてもちょうど模様替えしようと思っていたから結果オーライだね。」

「(流石ボス…計画的だぜ)じゃあすぐに来てくださいね!蓮二さんが飲み物用意するって言ってたんで!」



ルンルン、とスキップで行ってしまった赤也に笑みをこぼしながら綱吉に目を向けた。
顔色をうかがっている綱吉の頭を撫でて「行こうか」と手を差し出した。

ゆっくりと頷いて、幸村の手を握り第3ミーティングルームに足を向ける。
近づくにつれて綱吉の足取りは重くなり、手も震えてきている。

緊張をほぐす為か、深呼吸を繰り返し行っているのを横目で確認しながら。





「ついたよ。」

「こ、ここ……?」


ドアの上には銀色のプレートに黒の文字で“第3M・R”と表されている。
気配がないところから、まだ彼らはここまで来ていないんだろう。

ドアを開けて中に入ると、先に到着している柳生と丸井、柳、白石、千歳が待ち構えていた。
大きめのソファーがいくつかセットしてあり、白石が座っているソファーの背もたれに半分腰かけている千歳と、壁に寄りかかっている柳以外は腰をおろしている。
柳は2人を見るとすぐに動き、お茶の準備を始めた。


あいている一番奥のソファーに幸村と綱吉が腰をおろすとタイミングよくお茶が出された。
綱吉は柳にお礼を言った瞬間、ドアが大きな音を立てて開いた。

ビクリと肩を跳ねあがらせる綱吉は幸村の袖につかまり、身を震わせてしまう。
ドアノ前には窓越しで目が合ったザンザスが先頭に立っており、その後ろにはスクアーロ達が控えている。



「全く、少しは静かに開けられないの?来るたびに請求書を送るこっちの身にもなって欲しいよ」

「うるせえ」


ドカリ、ソファーに腰をおろすと幸村の隣でビクビクしている綱吉に目を向けた。
中学生だった時もこんな風に怯えていたが、それとはまた違う。

覇気もなければ、その後に見えてきた威厳すら皆無。
舌打ちして、幸村たちに視線を向けてから話を進めた。


問題は2日後に行われるパーティの件だ。
ボンゴレ暗殺部隊も参加するが、あくまで護衛。

つまり裏方だ。


ザンザスからボンゴレの近状を聞いておくにこしたことではない。



「つまり、パーティーではボンゴレに見合うかどうか試される…ということか」

「クソ女の実力を試される。」

「ボスの言う通りだよ。あの女、本気でボスになる気でいるからね。何度かの試験に受かれば晴れてボンゴレの正式なボス候補になれるしね」


マーモンははあ…とため息をついてソファーに身を任せる。
それを隣で見ていたフランは無表情で。


「マーモンさん貧弱。」

「うるさいよ」

「フラン君」

「なんですー?レジェンドの幸村さん」

「骸は、どうしている?」

「ししょーは今、必死に綱吉を探してますー。ミーにも探すように言われているんですけどねーボスから他言無用って言われていますしー」



なんだかんだ言いながらも自分の師匠に忠実なフランでさえ、今回の綱吉の件については黙っていてくれているようだ。



「ああ、師匠の話だとあの女、パーティでダンスの相手を選ぶらしいんで…目をつけられないようにしてくださいねー」



うげ。
全員の顔が同じものとなった。ただ綱吉だけが話に着いていけず首を傾げていたが。

2時間ほどの話し合いも終わりにし、ヴァリアーが帰ろうとしたときにザンザスが思い浮かべたような表情で綱吉をみた。



「おい。」

「……な、なんですか?」

「閉じこもるのもいい加減にしとけ、カスが。」

「閉じ、籠る……?」



そして、ザンザスはポケットの中から何かを取り出して綱吉に向けてそれを投げた。

間一髪で両手でそれをキャッチ。
取ったのを見ると何も言わずに去ってしまったザンザス。

それを見ていたスクアーロは一息ついて口を開いた。


「それはお前のだぁ…。ザンザスが認めるのは沢田綱吉、ただ一人だってこと、忘れるんじゃねえぞお。」

「認める……」

「じゃあなあ!」




ゆっくりと開かれた両手からは、指輪がひとつ輝いていた。





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