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そして君はサヨナラと言った
さまよい続ける掌






「イタリアには半日ほどかかりますし、ゆっくり休んでくださいね」

「ありがとう、骸」



ボンゴレ専用航空機内。
ふかふかのソファーに腰を下ろす少女は次期ボンゴレ10代目の候補としてあげられ、日々仕事に励んでいる。

キレイな服で身を包み、隣で優しい言葉をかける骸に笑顔を向けた。
キッチンからお風呂といったに日常生活に必要なものが全て整っているこの飛行機に乗っているのは時期ボンゴレボスの少女・溝端紫乃。
そして彼女の守護者たちだ。

キッチンで調理をしている獄寺。その隣で摘み食いをしている山本。奥で寝ている了平、ランボ、そして、彼女の傍らにいる骸。


「それにしても残念ね」

「……何がです?」

「恭弥のこと。一緒に行けばいいのに、1人で先に行っちゃうんだもん」

「どうでもいいことですよ、雲雀恭弥のことなど」

「ふふ、相変わらず仲が悪いんだね」


困った2人だ。そういう表情を浮かべる溝端に骸は苦笑した。
他愛ない話をしていると、キッチンから出てくる獄寺に骸はスッと退く。

獄寺に礼を言う溝端に骸はそのままゆっくりと下がっていった。
そのまま自分にあてがわれている部屋に戻るとベッドに腰かけた。

壁を背に目を閉じて彼の名前を呼ぶ。



――綱吉…




返事がない。

綱吉と骸は契約を交わした。もちろん、条件付きで。
骸は綱吉の条件を飲んで支配しないと誓ってこれがなされた。

だから、彼とは精神の中で会うこともできたし、誰にも邪魔されることなく任務の話も、報告も出来た。
こういう使い方もあるんだ。と骸自身考えもつかなかったことだったが。

このやり取りは相手が承諾しないとつながらない。
何かあった時。

拒絶…はないと思いたい。



「どこに、いるんですか…っ」



ウソつき。
約束、したじゃないか。
頭の中によみがえる、彼の意思と笑った顔。

あれからどれだけ会っていないだろうか。
高校は中退。そのまま行方知らずとなり、ボンゴレボスではなくなった。そして、今は彼女が受け継いでいる。


『あれが綱吉の?…そう、興味無いね』


恭弥がそんなこと言っていた。
もともと単独行動の多い人だが、綱吉が居なくなってから余計ひどくなったと思える。


『ねえ骸。雲雀さんと出会い頭喧嘩するのやめようよ』

『またそれですか、綱吉君』

『もう!止めに入る俺の気持ちにもなってよね!』


綱吉が居なくなってからも喧嘩は続いた。
何度もあった。けれど、そこに入ってくるはずのストッパーの姿はなく、残るのは喧嘩の爪痕だけ。
2人は無言で去っていく。入ってこない彼の姿が更なるいらだちを呼ぶにしても、それを解消する術がないから。



――骸…


ふと、頭の中で呼び出しがかかる。


――今、どこ?

――朔弥でしたか。今、イタリアに向かっている最中ですよ

――わかった。じゃあね

――ちょ、ちょっと待ってください!

――…何

――朔弥は、綱吉君がどこにいるのか知っていますか?

――聞いてどうする気?

――……

――綱吉は居ないし、帰ってこない。アンタも心のどこかでわかっているんじゃないの?

――それは…

――ボスである彼女をそっちのけでいいわけ?守護者でしょ

――ハっ、嫌いですよあんな雌豚。僕は綱吉君だからこその守護者ですから

――そう。……呼ばれた。じゃあね




ぷつりと切れた会話。
忙しいとは聞いているが、何の仕事をしているのか不明。骸はさらに頭を抱えた。
ヴァリアーの諜報員ならばなにか知っていると思っていたが。


「あなたも、ひどい人だ…」






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