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そして君はサヨナラと言った
ビルの地下で




白石にとって綱吉は大事な親友だ。
パーティーで知り合った仲で、この頃マフィアなんてものになるのをひどく嫌がっていた白石の理解者でもあった。



『はじめまして』

『!…はじめまして、ボンゴレ。貴方から話しかけてくれるなんて光栄です』


当時、白石はマフィアが嫌いだった。そして、ボスという立場で格社会というのも嫌いでボンゴレの挨拶でも隅で聞いているだけだった。
9代目の挨拶があり、次期ボンゴレ・10代目の挨拶。彼の挨拶は単的でとても質素なもの。
どこのファミリーにもある威厳が彼にはあまり見られなかった。

そして、話しかけられてから、彼は自分からボスになることを望んだわけではないことを知った。



『驚いた?』

『まあ、それは。』

『じゃあなんで?って顔をしてるね』

『そりゃあボスになりたくないのに、こうやって前に踏み出そうとしているんだし』

『…俺はね、マフィアなんて恐ろしいものになるの、すっごく怖かった。ううん、今でも怖い。中学に入って間もない時にいきなり言われたし、俺にそんなのできないって思った。』



風呂から出て、タオルで髪を拭きながらベッドに腰を下ろす。
明日の準備も出来ている。横目で部屋の片隅に置かれているスーツケースを見てからゆっくりと瞼をおろした。



『でもね、気づいたんだ。これは俺にしかできないことでもあるんだ・って。』

『“俺にしか、できないこと”?』

『そう。酷いようだけど、俺の言葉でみんなが言うことを聞く。皆を護りたい…それは紛れもない真実。俺一人で頑張ってもできないことだよ、だから、俺は皆を信じなくちゃいけない。皆の力を、心を、すべてを。皆が笑って暮らせるように、平和に暮らせるようにするために、俺はボスにならなきゃいけないんだ』

『重いなあ』

『そうかも。でも、これは俺がやらなきゃいけないことだしね。これくらい我慢できるよ』




白石は綱吉の話を聞いて、自分の悩みがアホらしく感じた。
そして、綱吉を尊敬に値する人物であることも。



「…し……白石!」

「!……謙也?」

「座ったまま寝てたんか?ヘリの準備出来たで」

「(もうそんな時間か…)今行く」

「準備は?」

「もうしてある。」



部屋の隅にあるスーツケースに目をやり、立ち上がった。
謙也は白石の荷物を持ち、彼の後に続いて部屋を出た。



「なんや悩みでもあるんか?」

「……悩み、なあ。たっくさんあるでー。全部聞くか?」

「うっ、やめとく」



あからさまに目をそらす謙也にクスリと笑って前を向くと一瞬にして笑顔は消えて難しい顔をした。
手紙にあった今回の招集。そしてその下に小さく書かれた追記事項。
頭を抱えたくなるような内容だったが、謙也にその話をすることなく屋上へと向かう。

既に全員揃っている。もちろん、スーツ着用だ。



「出発しよか。」



パーティーまであと2日。





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