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Dear you...
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「あー、それフィオじゃないですかー」

全然僕には懐いてくれないんですよねー
なんて愚痴をこぼしている。手を伸ばすフランだが、フィオは垂れている耳をピン、と立てて牙を出し威嚇している。
ほらー。
そんな声を出しながら手をひっこめれば耳も普通通りに垂れて、落ち着いた雰囲気が纏う。
骸に引っ付くように体を寄せ、丸くなって寝る体制を整えた。
朔弥は気にも留めず、炎を灯して胸に手を当てる。


「これで、いいわけ?」
「はーい、おねがいしまーす。」


10年という長い月日、水牢の中に閉じ込められていたのだ。
一度も出してもらえないため、身体能力は衰えてしまう。
通常ならば普通に歩けるようになるまで相当時間がかかるだろう。


「朔弥さんの能力は活性の晴でもないんですけどー…できるんですよねー…身体能力を戻すことが…」
「………」
「ミーは、朔弥さんの闇の属性以外にも雲属性の能力も関係していると思うんですー…」
「雲…?」


増殖と浸食。
なんの関係もないように感じさせるが、どのように働いているかは、未だに解明されていないらしい。

活性とは回復。すなわち、怪我などによる細胞の活性であり、筋力の活性ではない。
骸が衰えてしまっている身体能力を活性させることなどできないのだ。損傷しているのではないのだから。


「浸食は…操ること。私は、骸の筋力を浸食して無理やり動かすことで筋力を上げている。それを増殖すれば…」
「おー…なーるほどー…」

頭いいんですねー。
表情一つ変えずに朔弥へ言うと、小さな声が2人の耳に届いた。


「あたり、前ですよ…」


起きたてなのだろう、細々しい声は似合わない骸の声。
目を丸くして名前を呼ぶフランは、思わず椅子から立ち上がった。


「し、しょー…?」
「ぼく、の…自慢、ですよ」


ね、朔弥
そう口にする骸の表情は優しいものだった。
フランはため息を零し、カエルの帽子を深くかぶる。


「惚気はじゅうぶんですー。師匠の分も夕飯頼んできますねー」


ベッドから離れて部屋を出ていくフラン。
頼みますよ、なんて小さな声が聞こえながらも、無視して、ドアを閉めた。


「…………ハァ」


ずるずると、ドアを背にしゃがみこみ、膝を抱えて顔を埋めた。
初めて本当の骸に会えた。声も聴けた。やっぱり、幻覚とは違うもので…嬉しさなのだろう、両目から止めどなく涙があふれてきた。
目を覚ました瞬間、泣きそうになった所を我慢していた自分をほめたくなるほど。

(ししょ…っ)

泣いている姿など見られたら「クフフ…フランはまだ子供ですね…」なんてほほ笑むに決まっている。
ただただ師を助けたかった。
それが叶って、涙腺が緩んだなんて情けない。
フランはごしごしと涙を拭って立ち上がり、ゆっくりと廊下を歩き出した。


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あきゅろす。
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