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仕事の合間、コーヒーを淹れなおして気分転換。
四六時中パソコンと睨めっこしていたのもあるだろう、正直疲れた。

ソファに腰を下ろした数秒後に携帯が震えた。
突然の電話に重たい腰を持ち上げて電話を取ってみれば朔弥だ。
今学校だろ、プライベート携帯からこっちにかけてくるなんてよっぽどの緊急事態か?
ドキドキしながら電話に出てみれば、「学校に来て」なんて言いやがる。
しかも様子がおかしいときた。

全く…今度はなんなんだよ。

来日してからこればっかかよ。
俺が来る時っていつも弱ったお前しか見てない気がするんだが、大丈夫なんだろうか。




「…………で?」
「……」
「お前は何に怯えてるんだよ…」


助手席に座っている朔弥に目を向けた。
少しばかり揺れている瞳に目を細め、内心舌打ちをする。
小さい頃より感情表現が豊かになったのは嬉しい。

嬉しいけど……

お前、昔より脆くなってねーか?
気のせいなら、別にかまわんがな。


「友達には、連絡しとけよ」
「……」


どうせ、黙って学校出たんだろ?
なんて言っても、返事はねえし。

でもまあ、携帯を取り出してメール…か?まあ連絡すんならいい。
そんな様子で電話なんてしたら相手も困るだろ。

すぐに携帯をしまった辺りからそんな長いメールではなさそうだ


「それで、どこに向かうんだ?」
「……」
「俺が泊まってるホテルにでいいか?」
「……ん」

小さな肯定の返答に俺はホテルへと車を向けた。
また面倒くさいことに朔弥は無言。
しーん、としてて、本当に無言。

あー…これ、何か覚えがあるんだけど。


「着いたらお昼食うか?それとも、食ったのか?」
「………」

め、ん、ど、く、せぇーーーーーー!!!!


もうこの際俺が全部決めるか。
うん、決めるからな!

「よし、着いたらお昼!俺腹減ったしな。そのあと仕事が残ってるから俺はそっちをする。お前は好きにしてろ。」
「………」









部屋に戻って荷物を置いてからから、ホテル内にあるカフェでお昼を済ませた。
やっぱりコイツ何も食ってなかったらしい。

食う量は前より少ねえな。こっちではそんなに食ってないのかもしれないし、口を出すことでもない。
朔弥が好きなデザートも半分で手が止まっていた。

腹もいっぱいになったところで部屋に戻るなり、朔弥はベッドに倒れ込んだ。
相当、精神的にキているように見える。
冷めてしまっているコーヒーを啜り、まあ味も悪くないしこのままでいいか、なんて思いながら朔弥に視線を向けた。

「……、キノ」
「ん?」
「アルヴィスに、弟がいるって話…知ってるよね」

「あぁ、まぁな」

職業柄、知ってるっちゃ、知ってる。
…なるほどな、アルヴィスに関することならコイツがこうなっても不思議ではないか。


「テニス部の、顧問だって。」
「………へえ」
「憎んで、殺すかな…」


表で殺しとかはしねーだろ。
アルヴィスの弟…こっちでなかなか名前を聞かねえと思っていたが、まさかおもての世界にいたとはな
確か名前は…ルイス、だったか。


「…憎んで、殺して欲しいのか?」
「わからない。でも、アルヴィスの弟に殺されても仕方ないと思っただけ」


ベッドに寝そべる朔弥は丸まってて、髪の毛で顔は隠れて見えない。

ただ、俺が言いたかったのはひとつ。

気になるから、言ってもいいよな。

場の空気を壊すことになったとしても
お願いだから言わせてくれ。


「朔弥……」

「……」

「パンツ見え」
「黙れ」



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