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心電図モニタが規則的な音をたて、彼女が生きていることを知らせる。
後は、意識が戻るのを待つだけ。点滴や電子機器に繋がれている姿は、何度見てもやり切れない。

どうしてもっと早く決断を下さなかったのだろうか。そうすれば、彼女はこんな姿にならずに済んだのに。


元々はマフィアと関係のない彼女を、このままこの世界に居させて良いものか。ボンゴレリングがなければ生命を維持出来なかった彼女も、今は移殖を終えリングが無くとも生きていける。これを機に、彼女に平穏な日常を与えるべきではないのか。骸が帰って来た時から、ずっとこの考えは頭にあった。
マフィア業は常に死と隣り合わせだ。骸や俺の為なら自分の身を省みない彼女は、普段から任務による怪我が絶えず、いつかは命に関わる怪我を負うのではないかと、危惧はしていたのに。



『ボス、私ボスと出会えてよかった』

そう言って、彼女はよく微笑んでいた。その幸せそうな表情を見る度に、手放そうとしていた手をきつく結び直してきたのだ。
ずっと傍にという彼女の願いは、自分の願いでもあった。

甘い甘い夢物語。

なんて最低な結末。
一歩間違えば、彼女は間違なく死んでいた。自分の甘さが、この状況を呼び起こしたのだ。一命を取り留めただけでも良かったなんて、思えない。彼女の身体はボロボロだ。全ては、自分の決断が遅かった為に生じたこと。こんな自分が彼女を幸せにするなんて、無理な話だったのだ。

俺は、ある決断を下す。





数日後、彼女をボンゴレが支援する日本の安全な施設へと移すことが決まった。そこで治療やリハビリを受け、新しく一般人として生きていく為の準備をするのだ。目覚めた時、彼女はきっとこのことを受け入れはしないだろう。だが、拒否権は無い。これはボスの決定、彼女がこの先ボンゴレと関係を持つことは、一生無い。

皮膚よりも包帯が多く見える手を取って、ボンゴレリングをその指から外す。
平凡な毎日を、安らかに生きていてほしい。願うのは、もうただそれだけ。


「さようなら、クローム」

脳裏に浮かぶあの大好きだった微笑みに、未練がましくも涙が止まらなかった。




「どうか・・・・・・幸せに、」


心から、願う。







あきゅろす。
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