[携帯モード] [URL送信]
 



跳ねるように歩く。隻眼の彼女の軽やかな動きを後ろから眺める。小さな口から漏れるのは歌。よく知っている歌だった。イタリア語で紡がれるそれは、昔自分もよく歌った歌。透けるようなソプラノでのハミング。メローな歌声は、確かに俺の頭の中にゆっくりと入って染み込んでは、頭に流れるピアノの音と融和する。そして、体の奥底を刺激していく。じんわりと蘇る思い出を振り払うように髪を払った。
(ピアノ弾きてえ、な)
零れては消えていく彼女の声に、ピアノの旋律はよく似合うに違いない。
(って何考えてんだ、俺)
思わず浮かんだ、自分がピアノを演奏する姿に小さく舌打ちをした。ああ、次に来るメロディに合わせて歌ってやったらこの女は驚くであろうか。目を閉じて、溢れていく彼女の声を感じると、急に抱きしめたくなった。


(この気持ちを誰か止めてくれ、よ)


麻薬のように脳を侵す君の声にいっそのこと溺れてしまおうか

(頭を侵食する、)(もうすでに溺れてるなんて、見て見ぬふり)







第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!