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太陽の笑顔






私には、大好きな彼氏がいる。




いつも会えるのは、この私の住む島に彼が物資を調達するために立ち寄った時しか会えない。
頻繁な時は一か月滞在していたり何週間かに一回回ってきたりするけど、全然会えない時は2、3ヶ月なんてざらにある。
でも今日は付き合って1年目の記念日だからってわざわざ私の住む島まで来てくれる日。


貴方に会えない分会えた時に少しでも可愛くみられたい。
あなたに群がる女の人達を見て、羨ましくも思うし
あなたの一番でいたいと思う反面、彼女として虚しくなる時もあったり。
エースはどんな女の人達にも二カッて太陽みたいな笑顔で笑うけど…その笑顔私だけみてたらダメ?

そんなの、欲張りなのかな…?



窓辺に座り風に当たりながら一人でぼさっと考え事をしているともう、エースが来ると約束していた1時間前になっていた。



「そろそろ支度しなくちゃ…」



外に出てデートするわけでもなく家で会うからなのか何もする気になれない。何もしてない髪にヘアーアイロンをあてて、薄い化粧をするだけだったのでそんなに時間はかからなかった。



ピーんポーン






「はーい、入って」

「お邪魔するぜ」

「どうぞ」




彼は定位置である2人がけのソファーに座り、私は凄く距離をとってわざと先程まで座っていた窓辺の椅子に腰掛ける。
いつもならソファーの隣に座るけど、何故なら今日、私は貴方に怒ってることがあるから。




「また、エース可愛いナースとイチャイチャしてたんでしょ?」

「してねぇよ」

「嘘ばっかり」

「なまえだけしかみてねぇよ」

「嘘、マルコにでんでん虫で聞いちゃった」

「…わりぃ次から気をつける」

「気をつけてね」



軽く機嫌が悪くなった彼はムスッとしてそっぽを向く。

次からって私達に次があるかも分からないじゃない?
貴方は簡単に思ってるよね。貴方は海賊で私は村人。身分の違いがあって、連れて行ってって言っても連れて行ってわくれないのに…。

私は本気だよ…。

エースはソファーから立ち上がり私の前まで来て腰を屈ませて軽いキスをする。
やっぱり貴方は私を抱くんでしょ?

ただの体の関係なんて思ってない。でもね、ドキドキするような純粋な恋をしてみたいの。




「エース好きだよ」

「なんだよいきなり」

「だって、エースのこと大好きなんだもん」

「俺も好きだ」




太陽みたいな笑顔…

私の大好きな笑顔…



エースが島をでるまで後少し。いつもと何も変わらない特別なはずだった一年目の記念日。
もう会えないかも知れない。

いつ過去の人になるかなんて分からない…

いつもいつも、会えるのはこれで最後かもと心の中で寂しく思う。しょうがないのだ、海賊なんてそんなもんでしょう?永遠なんてない。



「俺帰るわ」

「もう帰るの?」

「あぁ」

「次はいつ会える?」

「まだわかんねぇ」



ちゅっとおでこにキスして帰って行くエースの背中を見送って切なくなる。

どうかご無事で…なんて、願ったって何にもならないのに。




私はその数ヶ月後、妊娠していることが分かった。
エースとしか関係を持ってはいないから、あの人との子しか考えられなかった。
嬉しくて嬉しくて、お医者さんから帰った日にいっぱい泣いた。
でもね、幸せの後に不幸なこともあるんだよ。



お腹を撫でながら、幸せを感じていたのも束の間の話。

ある朝エースが処刑されることが号外に載って、私はその号外をみて泣き崩れた。


ほら、永遠なんてあるわけない。


もっともっと、伝えたいことが沢山あったのに…

もっとワガママ言っとけばよかった。もっともっと愛してるって言えばよかった…っ。

もう伝えることもできないなんて。



時間が足りないよ…。





















月日が経ち、少し気持ちも落ち着いて来た頃。こまめに連絡を取っていたマルコ達が島まで来てくれた。
エースのお墓ができたから連れて行ってくれるって


エースは皆に愛されてたね…



「マルコ、久しぶり」

「早く船に乗るよい」

「ありがとう」



大きくなったお腹を抱えながら足場の悪い船への道をマルコに手を借りながら歩く。

もうすぐ臨月。


船に乗り込み、風の当たる所に居させてもらって数時間大人しく船に揺られた所にお墓は建てられていた。
貴方が尊敬した親父さんと私が愛した貴方のお墓が並んで建っていて、私は思わず唇を噛み締め泣くのを耐えた。


強くならなきゃ。
もう散々泣いたじゃない。笑わなきゃ、私は貴方の太陽のように眩しい笑顔が大好きだったのよ。

私が泣くのを我慢しているのを察したのかマルコが肩に手を置いて優しく話しかける。




「泣きたきゃなくよい」

「……エース」



そんなの、我慢しても涙とまんないよ…っ。




「エースのやつが最後になまえに愛してくれてありがとうって」

「じゃあ俺らは向こうにいるよい」

「ありがとう」



マルコたちが離れた後、私はエースのお墓の前にしゃがみこんで涙を拭う。



「エース、貴方はパパになったんだよ」



鬼の血をひく子だってあなたは怒る?

違うよね、喜んでくれるって…信じてる。



「エース、こちらこそ愛してくれてありがとう…」


あなたは誰にでも優しくて、誰にでも笑顔でいる太陽なような人。でも、愛していてくれたのは私だけだって知ってるよ。

どんなにヤキモチ妬いて不機嫌にさせたって、早く帰って行っちゃうあなたの背中も大好きで大好きでしょうがなかった。



精一杯の笑顔、貴方に届いていますか?




「行こ、マルコ」

「もういいのかよい」

「うん」




次来る時はこの子と来るから、そしたらね、パパはここにいるんだよって伝えるね…。

あなたのパパは強くて優しくて勇敢だったって。










end


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