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衝突!vsナディ

―アメールの洞窟―

俺はラルヴァについて調べるため、ジャニスのアジトを目指していた。


助っ人としてクレスとチェスターが付いてきてくれた。

 「本当にこの先にあんのかよ?」

 「あぁすずが手に入れた情報だ。確実にあるさ」

それほどすずは信用のおける人材らしい。

ちなみに二人が付いてきたのは、彼らの村がラルヴァを使用している以上ナディに襲撃される危険があるからだ。



 「そろそろこの辺だ………お?」

三層目の西側奥までたどり着くと、それらしいものがあった。

だが、先客もいたようだ。



 「ジャニスはいないのか……」

ナディだった。

仮面を被っていて顔がよく見えないが、三人いる。


 「ちくしょう、あいつらもう来てやがったのか」

チェスターは表情を険しくした。

 「しかし、どうする?」

ここで奴らと衝突するのはよろしくない。

ここでこのままやり過ごすか……?


 「仕方ないラルヴァの資料を焼き払え」

 「まずい!あれをやられたらお終いだ」

ところがそうもいかなくなった。

仕方ない、ここは正面突破するしかないか。


 「待て!!」


俺達はナディ達の所へ飛び出した。



 「なんだ貴様らは?」

 「俺達はその資料に用がある」

 「さては貴様らジャニスの手先だな」

冗談じゃない。
ジャニスなんて顔すら見たことがない。


 「ラルヴァはあってはならないものだ。軍事用に使おうと考える国もあれば、体調の不良を訴えるものもいる。さらにはラルヴァを使っている地域では森林が壊滅しているんだ」


流石、ラルヴァ推進派を追っ掛けているだけあって、俺達よりは詳しい。

確かにその話を聞く限り、ラルヴァが間違っているとは思う。

 「だが、お前達のやり方には賛成できないんだよ」

ナディのやっていることが正しいとも思わない。




 「ふっ…ならば!」

男達は剣を抜いた。

 「くっ…やるか!?」

俺達もそれに伴い身構える。



 ピュウゥゥー……

すると突然男のうちの一人が口笛を吹き出した。


 「っ!!チルスっ!」

クレスに呼ばれ振り返ると、そこには…

 「な、何だこいつら!?」

どこからか狗型のモンスターが数体現れた。

 「お前らの相手はそいつらだ」

そう言って、男達は奥へ駆け込んだ。

 「クレス、チェスター!こいつらは俺に任せて奴らを追いかけろ!」

 「大丈夫か?」

 「あぁすぐに片して追い付いてみせるぜ」

俺はクレスに親指を立ててみせた。

 「じゃあ任せたよ。チェスター、行こう」

 「おう!」

そして二人はナディを追いかけていった。





モンスター達は俺を睨み付けている。

といってもどこに目があるかわからないのだがww


 「よっしゃ、掛かってこいよ。この大剣の力を見せてやるぜ」

俺はモンスターに向かって挑発してみる。

するとそれを理解してか、モンスター達は飛び掛かってきた。



まずは真上から飛び掛かってきた一体を横に薙いだ。


モンスターは横に真っ二つに別れ、絶命した。


次に左右から一体ずつ襲ってくる。


左からきたものを裏拳で弾き、右からきたものを剣で防ぐ。


そのまま剣で受け止めた方を力ずくで跳ね飛ばす。


それを滑るように接近し、二段回に分け斬り上げる。

特技・幻龍斬――

武器を大剣に変えたものの、戦闘技術は劣ることなく、むしろ片手剣の時より調子がいい。

もしかしたら元々俺は大剣を使っていたかもしれないな。


幻龍斬で斬り上げたモンスターは壁にぶち当たり、二体目も撃破した。



 「ぅぐっ!?」

刹那、左腕に激痛が走る。

見ると、左手に先程裏拳で弾いたヤツが噛み付いている。

そいつはものすごい力で顎を締める。

ミシミシッと骨が軋む音がする。

 「くっ、こ…のォッ!!」

俺は右手で握り締めた大剣の柄をモンスターの額に思い切り打ち付ける。

 「ギャンッ!!」

モンスターの額は陥没し、断末魔をあげる。


モンスターは残り一体。

しかしこの腕では力を入れることはできず、剣を振ることができない。


傍観していた最後の一体がここぞとばかりに突っ込んできた。


まずい。

このままでは戦り合うのは無理だ。

しかし退こうにも、相手の足には敵わない。

仕方なく片手で剣を盾にし、受け止める。

しかし片腕で相手の力を受け止めきれず、押し負ける。

体制を崩した俺にモンスターは牙を突き立てる。

 「うぅ………」



だめだ。耐え切れない。



絶望が体中を支配していきあきらめかけた、その時――



 ヒュンッ


 トスッッ



突如眼前に矢が飛んできた。

それはモンスターの頭を貫き、グゥと短い悲鳴をあげた後で倒れた。


 「大丈夫か、チルス!!」

チェスターが駆け寄ってきた。

そうか、今の矢はチェスターのか。

 「すまない。正直助かった。」

チェスターの手を借りて立ち上がる。

 「まったく…無理するからだ」

確かに。
まだまだ修業が足りないということか。

よし、帰ったら特訓だ。


 「そういえばナディの奴らは?」

 「すまない……逃げられた。」

奥からクレスがやってきてそう告げた。

 「何言ってんだ、肝心の資料は無事なんだ。それに今回はナディを追うのが目的じゃない」

チェスターの言う通り、今回はラルヴァの研究資料が目的だった。

 「それじゃ早いとこ用事を済ませますか」





――
―――
――――

 「よし、これか」

机に積まれた研究資料に目を通す。

 「うぇ、何が書いてあるかさっぱりだ」

案の定それには一般人には不可解な記号やら数式がびっしり書かれていた。

 「写していけば問題ないさ」

 「なぁ直接これを持って行けばいいんじゃないか?」

 「駄目だよ。それじゃ泥棒じゃないか」

まぁ律儀なこって。

しかし結構量がある。

俺達は三人で協力して書き写すことにした。



――――
―――
――




―バンエルティア号・船内―

 「お疲れ様。よくやってくれたわ」

バンエルティア号へ帰還した俺達は書き写した資料をリフィルに提出した。

 「あの、それ読めますか」

 「ええ、もちろんよ?」

 「よかった。少し不安だったんだ」

なんだかんだ言って、クレスも不安だったらしい。

だがそれを理解できるリフィルは流石というかなんというか。


 「とりあえず、これは私達のほうで調べておくから。本当にお疲れ様」

リフィルにそう言われ、俺達は解散した。




 〜〜


 「うぅ…くっ……」

自室に戻る途中、左手が疼く。

そうだった。
俺は怪我してるんだった。

すっかり忘れてた俺は後から来る痛みに苦しめられた。


 「どうしたの、チルス!?」

その姿をカノンノに見られた。

彼女は血相を変えて駆け寄ってくる。

 「いや、何でもない…」

咄嗟に俺は左手を背後へ隠した。

何と言うか、こういう姿を見られるのは格好悪い。

 「怪我してるの?見せて」

カノンノに隠した腕を掴まれて、俺は思わず顔をしかめた。


 「ひどい怪我……!早く治療しないと」

 「でも今は治療室が使えないぜ?」

そう、現在治療室は先日怪我をした青年がまだ使用しているため、入ることができない。

 「だったら私の部屋に来て。このまま放っといたら大変だよ」

 「えっ?ちょっ、うわわっ」

カノンノに引っ張られ、俺はそのまま彼女の部屋に連れてかれた。


 〜〜

―カノンノの部屋―

 「あっ、痛てててテテッ!」

消毒液が傷口に染みて、つい暴れたくなるような痛みが走る。

 「男の子だから我慢してよっ!」

と、カノンノに言われ、大人しくする俺。

なんかカノンノ怒ってる?


 「とりあえずこれで大丈夫だけど、あんまり無理しちゃだめだよ?」

 「大丈夫だってば。これくらいの傷すぐに治るって」

俺はビシッと左手でガッツポーズをする。

少し痛かったが、何とか顔に出さずにすんだ。

 「そうじゃなくてっ!」

ついにはカノンノに怒鳴られてしまった。

その顔は今にも泣きそうなほどである。

 「今回も、チルスが一人でモンスターを相手にしたのはあなたの正義感が強いからってのも分かってる。だけどもしそれでもっと大怪我したり、取り返しのつかないことになったら……わたし……」

と、ついにカノンノは泣き出してしまった。

怒鳴られて呆気に取られていた俺は、それで一気に正気に戻った。

 「ごめん、カノンノ。俺、自分の力を過信してた……」

カノンノは両手で顔を覆って、その顔をあげなかった。

 「俺強くなるよ。それでもうこんな怪我なんてしない」

 「ちが…そう…じゃなくて…」

カノンノは涙声て続ける。

 「チルスは…十分強いよ…だからもっと私たちを頼って欲しいの…それなら…傷を回復できるし、戦闘のフォローもできるし…」



俺はものすごいショックを受けた。

まさか自分の身をこんなにも案じてくれる人がいるなんて。

そう考えると、俺は何て身勝手な行動をとったのだろうか。

 「ごめん、カノンノ」

俺はもう一度謝り、カノンノを抱きしめた。

 「これからは怪我したらすぐカノンノの所へ飛んで行くから」

 「うん……グスッ…そうして?」

場を和ませようと言ったことなんだが、カノンノは真に受けてくれたようだ。



しばらく無言の時が流れたあと、俺はカノンノから離れた。


 「じ、じゃあ俺は戻るよ。手当てしてくれてありがとうな」

 「う、うん」

抱き合ってたということを後から意識してしまい、お互い顔が真っ赤になる。

とりあえず俺はカノンノの部屋から出た。



 バタン

 「ふぅ〜……」

そして俺はため息をついた。


あんな女の子を泣かせて、俺は何をやっているのだろう。

俺は自分が情けなく感じた。

 もっと、強くならないと。

せめて自分が負った傷だけでも回復できれば。

カノンノにはああ言ったものの、自己回復できれば心配させることはないだろう。

少し回復術を勉強するか。


――二度とカノンノを泣かせないように。





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