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MAGIC.gaG!
俺、声を聴く
「・・・椎名、本当にいいの?」

木霊して反響する言葉
切なく響きその「音」は
周りの騒音に掻き消された

煌夏愛
「どうしたの?
また何か呼ばれた?」

その木霊に気を取られ
感慨深く
立ち止まっていると
夏愛が引き戻すように
そっと窺ってきた

桜龍彦
「え?あぁ、ごめん
…うん、また声がしたよ
誰かに問い質してた」

煌夏愛
「そう…やっぱり
聞こえるのは
あんただけなのね
なんで、私には
聞こえないのかしら」

桜龍彦
「何か、きっと
あるんだと思う
うん、まるで
助けを求める様に
早くって
言われてるんだ」

辛そうに顰められた眉に
夏愛は息を詰める
まるで自分に責任を負ったような
胸に圧し掛かる痛みと
罪悪感が積もった

煌夏愛
「…!それは…」

それを不思議に思ったのか
龍彦は首を傾げ覗き込んだ

桜龍彦
「夏愛?どうしたの?」

煌夏愛
「…っ、気のせいね
なんでもないわ
それよりも先を急ぎましょう
いつまでも夢に取り込まれたら
危険な気がしてくるから」

そして廊下を突き切ると
妙に懐かしい気持ちになる
建物の前に辿り着いた

桜龍彦
「ここは…」

かつてそこは
男子寮と呼ばれた所だった
そこも荒れ果て無残に
あちらこちら壊されていた

砂礫岳
「ひでぇもんだな」

煌夏愛
「そうね…ここも
暴走した生徒が
荒らしていったのかしら」

桜龍彦
「中に入ろう
きっと誰か先生がいる気がする」

砂礫岳
「だな」

次々と壊れた扉を潜り
入っていくとどこからか
泣き声が聞こえた

「…っ ごめんなさい 拓君」

桜龍彦
「…!!え?今
女の人の声がしなかった?」

砂礫岳
「…したか?」

煌夏愛
「いいえ、聞こえなかったわ」

桜龍彦
「そっか…気のせいかな」

気になりだすと止まらない
謎の声 妙にまた
悲しくなってくる

煌夏愛
「声がした方へ行くわよ
気になるんでしょ?」

桜龍彦
「え?…おう!」

砂礫岳
「そっちの方角か
確か2年生達が住んでる場所か」

桜龍彦
「え?!分かるの?」

砂礫岳
「ほら、見てみろ
そこの札、黒B組
2年生寮って書いてあるぞ」

煌夏愛
「へえ、確かにそうね」

桜龍彦
「黒B組…、か
何か聞いててこそばゆいな」

煌夏愛
「…私も、なんか
こそばゆいわね」

砂礫岳
「ふーん、なんかあるんだな
よし、行ってみるか」

桜龍彦
「よし!」

意を決して侵入すると
意外にも荒れ模様は
少なかった
そこにただ一人
少女が佇んでいるようだった
思わず一同は吃驚して固まる

「見つけてくれて
ありがとう
そして、さようなら」

希美と言われた少女は
綺麗に笑い残像は消えていった
その入れ代わりの様に
花笠がやってきたのだった

花笠桃
「あら、皆どうしたの?
そんな顔しちゃって」

煌夏愛
「桃先生…私、私
大事な事を
置いて行ったような
気がするの…」

花笠桃
「…そう、そうなのね
貴方も、さくら君も
そうなのね」

桜龍彦
「…はいっ」

花笠桃
「じゃあこの先何もないから
戻りましょう?
きっとここにはもう…
何もないと思うから」

砂礫岳
「そうみたいだな
視界も暗くなってきたし
なんか危険な気もするから
急いで引き返そう!」

煌夏愛
「えぇ!」


そして慌てて足早に
建物の外へと一同は
去って行った
残像の声を耳に残して

桜龍彦
「……ありがとう、か」

煌夏愛
「なんか言った?」

桜龍彦
「ううん、なんでもない!」

嬉しそうに微笑んで
胸のわだかまりはいつの間にか
去って行った




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