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2 side.ミランダ


街は一人を除いて毎日同じような日々を繰り返す。
何も変わってくれず何一つ変わらずその人以外誰も気付かない。
「もうたくさん。」そう思って何日が過ぎたことか。
私は不幸。
不幸の女ミランダ。
けど、毎日同じ繰り返しの日々に何故か違うことが起こった。


いつもと同じ朝。


なのに私の目の前にいる見たこともない生き物は何かしら。
まさか首を押さえ付けられて拘束されるなんて夢にも思わなかったのに。
その女性は髪を頭の上でネットで止め真っ黒なワンピースを着ており、顔は苦労の所為か痩せ細り頬がこけてしまっている。
目の下には凄い隈もあった。


「(これは何?)」


目の前の初めて見る生物に驚いて困惑した目で見つめているけど、意外にも冷静に今の状況を分析している私がいる。
私は目の前の生き物に殺されそうになってるのかしら。
確かこの後の私は馬車にドロ水かけられて家に帰って寝るハズなのに。


何、この化物。


私は知らない。
初めての出来事。


【イノセンスはどこだ…?】


首が苦しいことでコレが夢じゃないことくらいは解ってる。


「(今日は“今日”じゃなかったの…?)」


私はココで殺されてしまうのかもしれないのに、何処か頭の片隅で“今日”を抜け出せるのかもと期待している。
嬉しさか恐怖かは分からないけど、自然と涙が流れ落ちてしまうのはやっぱり嬉しいのかしら。


「(私…)」
カツンッ!


人通りの少ないこの路地裏で響いたブーツの音。
暗がりに立つ一人の怪しい人に視線を向けた。
フードを被っていてその顔も表情も私からはよく分からない。
だけど。


「その女性を放してください。」


まだ随分と若い少年らしき声に何故か少しの希望が生まれた。

私は助かるの?


「こんばんはAKUMA。」


その人は目の前にいた化物に武器らしきものを切り付けた。
“あくま”というものを私は聞いたことがない。


初めての日。


初めての出来事。


初めて聞く言葉に耐えていた涙はとうとう目から零れ落ちた。
また新しいのが出て来て、あの黒服も“今日”と違う。
いつもと違う出来事が嬉しくって、やっと抜け出せると思ったら居ても経ってもいられなくって。
女性は黒服の少年――アレンを置いて場から駆け出していく。


「(“今日”の出来事が、どんどん違ってく。)」


やった!!


「あはははははははは!!」


泣き笑いしながら少しだけ気持ち悪い感じに裾を持って駆け出していく。
だが、助けに入ったアレンはアクマと戦っており、そのことに全く気が付いてなかった。


「(わたし…)」


私…


私!


「(“今日”から、抜け出せたのね!!)」


嬉しそうに“今日”が終わったことを確かめるように笑いながら広場を走っていく。


「うふふふっ、あはははははははは!!」


ある意味ホラーでしかない。

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