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暫く考えていたのだろう。
気が付けば「開門んん〜〜〜?」と門番の声に続いてコムイの声が聞こえてきた。


「入場を許可します。アレン・ウォーカーくん。」


ふぅ、と息を吐いて今まで押さえていたユウの刀を受け流して柱に寄りかかる。
ユウは納得できないのか、俺が退くとアレンに六幻を突き付けた。


「わっ!」


ユウも本気ではないから、これ以上アレンに切りかかることはないだろう。
様子でも見るか、と距離を置いた。


「待って。待って神田くん。」


ゴーレムからコムイの声が聞こえてきた。
それでもユウは六幻を構えたままゴーレムに話し掛ける。
その際に先程からアレンの視線を感じるが気にしないことにした。
これ以上、助ける義理はない。


「コムイか…どういうことだ。」
「ごめんねー早トチリ!その子クロス元帥の弟子だった。ほら謝って。リーバー班長…」
「オレのせいみたいな言い方ーー!!」


コムイが事もあろうにリーバーの所為にしようと口を開いたがリーバーが途中で割り込む。
コムイはそれをものともせず、押し退けながら言葉を続けた。


「ティムキャンピーが付いてるのが何よりの証拠だよ。彼はボクらの仲間だ。」

((あ、リナリーが来た。))


それでもやめないユウに見兼ねてリナリーが持っていたファイルで頭を叩く。
パコッと可愛いらしい音で殴られて、ようやく二人はリナリーに気付いた様子。
二人の驚いた顔に少しだけ苦笑した。


「もーやめなさいって言ってるでしょ!早く入らないと門閉めちゃうわよ!秋羅くんも見てないで止めなさい!!」
「ははっ、怒られたな。」
「入んなさい!」

((リナリーってリノンに似てきたな…))


全員が教団に入ったのを確認すると、ガシャッ、と音を立てて門は閉まった。
リナリーはアレンに向き直ってまずは自己紹介。


「私は室長助手のリナリー。室長の所まで案内するわね。」


ふと、横を見ればユウは直ぐ様その場を去ろうと歩きだした。
何か思うことがあるのだろう、と秋羅が視線を戻す。
それにアレンが気が付いてユウに声をかけた。


「あ、カンダ…」


そう呼ばれるのが嫌なのか。
ユウがアレンを睨めば少しだけ怯んだようで顔が真っ青になった。


「…って名前…でしたよね…?」


怯みつつもよろしくと言って差し出した右手をユウはちらっと見ただけだった。


「呪われてる奴と握手なんかするかよ。」
「なっ」
「おい秋羅。お前は早く部屋に帰れよ。」
「ん、ああ。」


ユウは秋羅に声をかけるとすぐにその場を立ち去っていく。
その後ろ姿を見ながら言われた本人は“差別”と心の中で思いつつ、体の回りにはオーラが滲み出ていた。
秋羅は面倒だと大きなため息を吐くとユウがいなくなった廊下から目を離してアレンに向き直る。
名前を知っているが敢えて知らない振りを決め込んだ。


「えっと、アレンだったよな?…あんな奴だけど根はやさしいんだよ。」
「(あの人が優しい…?)」
「多分。」
「(多分ですか!?)」


物凄くリナリーから呆れた目を向けられたが気にしない気のせいだろう。


「あ、えっと僕はアレン・ウォーカーって言います。さっきは助かりました。ありがとうございます。あのなんて呼べば…?」
「俺は鈴村秋羅。」
「変わった名前ですね…」
「日本人だからな。で、神田と一緒でエクソシスト。まあ近いうちに任務で同じになるよ。」


アレンは時の破壊者。
そして素直で真っ直ぐな瞳を持っている奴。


「あ、俺はもう行くな。リナリー後はよろしく。コムイには…死ねって伝えといて。」
「え、あ、うん。」
「あ、それともう一つ。俺からの忠告な。」


秋羅はアレンとリナリーに背を向けると何かを思い出し歩きだした足を止めた。


「アレン。優しいのはいいことだが、お前はこの先苦しむことになるぞ。よく考えて行動するんだな。」
「……え?」
「ただ優しいだけじゃ何も救えないと言ったんだ。」
「!?」
「秋羅くん!!」


お咎めのリナリーの言葉に秋羅は口の端をあげるとそれ以上何も言わずにその場を去った。
眉を寄せていたアレンは思っていたことを口にした。


「秋羅って女ですよね?」
「……ん?男の子よ。」
「……そうなんですか?綺麗な方ですね。」
「ええ、そうね。でもごめんなさい。」
「あ、いえ、別に気にしてませんよ。だけど…」


冷たい感じの人だ。
アレンは小さくそう呟くとリナリーの後に続いて教団を歩き始めた。
導きの光から時の破壊者への初めての助言。
その意味に気付くのはもう少し先の話。

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